

5月連休初日くらいに、ラファエル前派展へ。
娘と丸の内 日比谷に行ってきました。(いままで開かれている、ミレイ展、ラファエル前派展、唯美主義展など多くを娘といっていて、感想を聞いても結構よく観ているなと思っていたので・・・小学生から中1で森美の展覧会やBunkamuraに行ってると思います。)

フライヤーではロセッティが大々的ですが、先に行かれたRieさんからラスキン200年特集、バーンジョーンズ、モリスも豊富とお聞きしてそれなら行こうと連休中行くことにしました。撮影可展示室がありますが圧倒的に撮影不可の9割の展示物が素晴らしい。三菱一号館はバーンジョーンズ展、唯美主義、ラファエル前派はミレイ展文化村、ラファエル前派展 森美、ラファエル前半イヴリンドモーガン、夫の方のパナでのタイルテキスタイル、アーツアンドクラフツ都美術とみてますが、今回は展示構成的にラスキンと芸術家たちがかなり浮かび上がる形で良い展示でした。
ラスキンの素描、水彩が豊富かつ、彼がイタリアや芸術、詩性に関心をもったきっかけであるサミュエル・ロジャーズの詩集「イタリア」(1830年)も展示があった。(解説によれば13歳の誕生日の時の贈り物としてこの本を得たラスキンは夢中になったという。
Samuel Rogers, Italy, a Poem (1803)
樹木や木の秀作、フィレンツェのサンミニアート・アル・モンテ聖堂ファサードの模写、Veneziaのサンマルコ大聖堂の柱頭彫刻模写、シエナのライオン型放水口...などの建築モチーフの詳細な素描や水彩、岩、樹木などの緻密な描写スケッチなど、このエリアの見ごたえは、後に現代画家論やヴェネツィアの石造建築についての著者になるラスキンのベーシックな関心がよくわかる構成になっている。
また、ティントレット<マギの礼拝>(サン・ロッコのケルビムの模写)(ラスキン財団 ランカスター・ラスキンライブラリー)などは、バーンジョーンズへ最終的にひきづがれていく、ラファエル前派のコアの一つである天使論(天上位階論的な)ものの原形をみることができると感じた。
ラファエル前派とは何か。様々に定義できるかもしれないが、聖母子やラファエロ(工房)の作風よりもフラ・アンジェリコ時代、あるいはピコが論じたような、またそれ以前の神名論の天使型ヒエラルキア(知と美の世界)への回帰がラスキンーバーンジョーンズであり、学術的な自然へのまなざしはまた別なものとしてウィリアム・ホルマン・ハントの「鳥の巣」(イワヒバリの巣)、<果実>(スビノサスモモとプラム)などは初期の自然への憧憬を引き継いでいる。モリス、ミレイ(初期)などはまたそれぞれにバックグラウンドがあるのだが、重要なことは、モリスにしろラスキンにしろ、失われていきつつあり破壊されつつある自然や文化、資本主義や工場制生産などへの日迎合と危機感があるのは確かだと思う。
(かつて感想に書いたと思うが、モリスの思想とアーツ&クラフツ、著作などは、まだ実現していない(「ユートピア型」)の非資本主義への憧憬がみえることだ。(逆説的ながら、資本主義批判は、それに触れない人よりも比較的富裕な人の間でおこる。彼らは何が本質か知っているがために、虚に基づく富や効率やモノ(形相質量的な)の意味を考える。物質として現れるがゆえに、表現されたものを成り立たせるテクネー(技術)と自然に根差す素材、美とは何か、それらを構成する人の知とは何か、残すということと審美的な態度、所有ではなく使用するという意味での物質主義、大量規格品とそれを生産する人(ベタな言い方をすれば「人間疎外状態」)などが含まれている。モリスの著作は、理論では考えられていたフランス型の社会思想などとも関連していると私は考えている。ラスキンからバーンジョーンズにいたる展示は見事で、もう一度できれば観に行きたい次第。

撮影可能エリアがあります。(が圧倒的に撮影不可エリアの作品が素晴らしい)
ミレイ、ロセッティほかいくつかそのエリアの写真です。







図録を帰りの手荷物の都合で次回にしてしまったので、作品リストとそこへとったメモだけで、ひとまず覚書を。
バーン・ジョーンズに関しては他の写真含めてもう少し加筆したい次第。


横山千晶先生訳のラスキン

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