2度目の感想
ジークフリート、ハーゲン、素晴らしかった。
3幕以降、ニーベルンゲン(闇の種族)側への強い視点を感じます。ミーメ、ジークフリートにローゲをからませノートゥングを鍛え直すところはバレエならではのおもしろさ。
思えば、ローゲ(火の神)は、ノートゥングを鍛え直す火でもあり、最期ジークフリートの遺体を焼き、ワルハラ城をも焼き尽くし、ブリュンヒルデもその中に自身を犠牲にする火でもあります・・ローゲをこの指輪に全体的に配した視点でバレエを作るという物語と外部という多元的な舞台を作り上げたことは新しい「指環」ならではです。素晴らしかった。
ブリュンヒルデは、ジークフリートと結ばれますが、おばと甥という血縁関係であり、ジークフリートの誕生の庇護者でもあり名付け親でもある・・そういった複雑な「愛」慈愛までサイダコーワのブリュンヒルデには感じられました。本当に素晴らしかった。
ヴィシニョーワのブリュンヒルデは、ワルキューレの時が印象的。舞台ばえしますよね。ワルハラ城を守るイメージの振り付けも良かったです。
でもワルキューレの場面は、パトリス・シェロー演出の1980年バイロイトのほうが迫力が。大体凄いです、あの場面は、弦の後ろで木管が音を翻すように歌っていて・・さながら死者の悲鳴とワルキューレが戦場を駆る一体性がもの凄い。
ローゲは最期、自らの死を持ってジークフリートと共に自身を焼き尽くしその炎によって世界は終焉を迎えます。彼女は希望の扉を後ろ手に閉め、「悟ったものが輪廻を断ち切れる」と言います。「輪廻」とは仏教用語なので、これは誤訳で「永劫回帰」を指すといってよい。
「生まれた時はあんなに強そうみ見えたのに、いまでは関わるのが恥ずかしいくらいだ。燃えさかる火焔にふたたびこの身を委ねたい欲動にかられる!
このような愚かな最期を彼らと迎えるのは御免だ」
そういって、ローゲは嘲笑しながらその場を去る・・・
虚栄を手にした神々は、豪奢な衣装に身を包み、踊る。
それをブリュンヒルデは城とともに守る・・・。
ローゲはまた、ブリュンヒルデと最期のワルツを踊る。
そしてそのワルツも終わる時、彼女を激しくつきとばして、高らかに嘲笑う。
それはまるで、バタイユの作品の人物が、絶望し、狂気と終末の歓喜によって自我さえも放棄し、笑いとばす、まさに「この世の終わり」と共にある笑いの表情である。
死にゆく世界と自身を真実と偽りを、共有し、そして笑い飛ばす。
不可能といえる演技に、言葉もない・・・。
本当にこのローゲとブリュンヒルデの最期は素晴らしかった。
世界の終わりの瞬間が、そこには顕れていた。・・・・・。
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