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パリ・オペラ座ガルニエ宮にて2009年に上演された、ガラ公演、セルゲイ・ディアギレフ生誕145年記念公演の映像収録作品。著作権の問題等でDVD化されていない本作を日本橋の東宝シネマで上演するというので行ってきました。チケットの前売り時にちょうど日本にいなかったので半ばあきらめていたのですが、ぎりぎり購入できたので行くことにしました。本来は昼の上映にいくつもりでしたが、二回目上映だったので本当にぎりぎりでした。

薔薇の精
三角帽子
牧神の午後
ペトリューシュカ

いずれもバレエ・リュスの作品といえば有名で、薔薇の精(ミハイル・フォーキン振り付け/楽曲がウェーバー)、牧神の午後はヴァツラフ・ニジンスキー振り付けで上演当時は問題作とされたものの、極めて見どころが多い作品。音楽はドビュッシー。
ペトリューシュカは、本場ロシアや日本では東京バレエなどでも上演されている(牧神の午後もかつてマラーホフやベジャールバレエのダンサーなどとも共演している)。人形だが人間の心をもつペトリューシュカはつねに笑われ蔑まれている。ロシアの町中の祭や街頭芸人たちと都市の人々が求める享楽や娯楽を背景にして、精神とは、肉体とは生命とは...感情や祝祭、ドラマ、悲劇性、喜劇性それらを含んだ作品で、一見上演するのが容易そうだがまさにカンパニーの力量を問われる作品。

手元にパンフレット等がなく、自分が今までみた作品と読んだ文献などから、引用などせずに印象的だったことだけでも書きとどめておく。

薔薇の精
イザベル・シアラヴォァラ マチアス・エイマン

マチアスの薔薇の精は、かつて日本の夏のガラ公演でも踊られていてそれが素晴らしかった。(このblogにも感想があると思うが)少女役のほうをイザベルが演じるというのがとても新鮮だった。

三角帽子
ジョゼ・マルティネス マリ・アニエス=ジロー 
しかしおそらくコリフェの中にアニエス・ルテステュもいたりして、登場人物が多い作品のこの三角帽子やペトリューシュカは、よくよくみているとペトリューシュカにはドロテ・ジルベール?とおもわしき人がでていたり、ミリアム・ウブド・ブラームがいたりする...パリオペラ座のエトワール総出演といった雰囲気。
どちらかといえば、ジプシーたちやスペイン・バスクなどを主において、フランス軍は道化的な(サンチョパンサのように扱われたり)するので、バレエリュスがパリで上演したのならかなり画期的だったかもしれない。
推測なのだが....

牧神の午後
シャルル・ジュド とピエトラガラの映像でみた「牧神の午後」がまさに神々の領域だったのが、二コラ・ル・リッシュも凄かった。人間と神、野獣、パーンもまた、中間存在であり、神々からもニンフたちからも動物たちからも人間たちからもおそらく異質とされている。ニンフもまた中間存在であろう。
この物語をどう受け止めるか、というより極めて高度な技術とテキスト解読および表現性がもとめられる。
普通にこの通りに人間が動いたとしても我々はなにか粗雑なものをみたとしか思わないだろう。
しかし、二コラ・ル・リッシュの牧神は、テーマとともに、彼自身が牧神であったし、中間存在である不安、人間でないことへの気楽さ(半獣神)、しかし人間や神々同様に興味や愛に似た感情をニンフに抱く。この微妙なものをあらわせるのは、古代の詩の世界だけかもしれない、だが、パリ・オペラ座とバレエ・リュスのニジンスキーは、牧神の午後という音楽と、ニジンスキーが当時、ルーブル美術館で古代ギリシア美術をみていて考えたものが現わされている。彼に時間やストレスがなく資金も製作に熱中集中できる環境があったら、さらに凄いものをつくっただろう。いわば、これはデッサンの状態から上演したのであって、そうした何か、手をいれつくされていないが、本能的に表現したかったものが表出してしまった、というべきもので稀有な作品だ。
そしてこの作品をそう鑑賞できること自体が、稀有なのだ...
ニンフ役はエミリー・コゼット。
おそらくは、再演のときのプレルジョカージュ作品「メディアの夢」がそれなりに評価されてのことだろう、ニンフの微妙な自意識と恐れと興味、他者への距離のおき方、しかしあくまで人間的ではない優美さで・・・見事でした。
メディアの時よりも表現が正確だった。

ペトリューシュカ
バンジャマン・ペッシュがペトリューシュカ。
バンジャマンも演技が優れているのと同時に大変身体能力表現が強みのあるダンサーなのだが、それらを逆封印するかのようなペトリューシュカだった。彼の姿は「眠りの森の美女」での青い鳥が有名だが、やはり人でない存在を表現するのは大変長じている。もちろん他のノーブルな役もすばらしいのだが...
ペトリューシュカに関しては、マラーホフと東京バレエ版、映像においても、舞台においてもかなり目にする機会が多い作品であって、ペトリューシュカとは何か、というテーマだけでも考えつきることはない。
今回は、バレリーナ役にクレール=マリ・オスタ。
このオスタが素晴らしい。今までで観たペトリューシュカのオスタの中でもこれ以上のものがあるのだろうか、とおもうほどだった。オスタはバレリーナ・バレエダンサーという職業や役割を本当に理解しているダンサーだったし、この役を躍るための知性や理解もさることながら、心があるようなバレリーナ人形 という本当にやろうとしたら大変な難役を完璧に演じていた。・・・とにかく、彼女のパはどこまでも正確だし観る者を魅了する、そしてこの演技というのも不似合ながら、その時間だけ、バレエ・リュスのペトリューシュカのバレリーナ そのもののようだった。

一度しか観られない企画だったし、席も実はあまりいい席を選べずスクリーンも見やすくはなかったのだが、観に行ってよかったと思う。もしDVDであれば、何度か気になるところも観られるだろう。
カメラの切り替えもあるために、生の舞台をみるのはまた異なってしまうのだが。
ぜひ、以前、東京都庭園美術館でバレエ・リュス展をやったときに、資料コーナーで上映していた、ルグリが薔薇の精を踊り、シャルル・ジュドが牧神...のDVDを再版するか、こちらも上映してもらいたいと思った。

2017-03-31-21-06-39

会場はとにかく満席で、パリ・オペラ座のヌレエフ世代のダンサーたち、黄金時代の1990年代から2010年くらいまでのダンサーたちとパリ・オペラ座のバレエ芸術の世界を愛してやまない人たちが多いことがわかった。
私たちは、もちろんこの作品を観ておきたくて会場にきているのだが、(すくなくとも私は)今は劇場でも得難い本当にすばらしい舞台経験ができた時代が去ったこともどこかで嘆いている。

日本のクラシック、バレエ、オペラのファンはそれぞれがどこかで切れている...国内でチャイコフスキーの火の鳥とバレエ火の鳥を上演することができれば、1900年代初頭のパリに近づけるかもしれない。
ぜひ国内のダンサーが良いときにそうした企画をしてほしい。都饗との春の音楽祭などでぜひ行ってもらいたい。火の鳥かペトリューシュカであれば、オケのファンでも興味をもつであろうし、実際、バレエ音楽を本来の上演舞台と一緒に体験しなければ、作品としては部分だけをしっている状態なのだ...。

残念ながらまだまだ文化が成熟するほどになっておらず、バレエ・リュスが成功したのはパリの芸術家たち、文学者、画家、詩人たちがバレエリュスのテーマを熱烈に歓迎し、解釈し、批評して評価したからにほかならない。
それらは文学や神話、絵画美術の世界との交遊で、自然には目にできないものだからだったからと私には思われる。


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3月31日の上映を日本橋にて鑑賞。

家にあるパリ・オペのDVDをまた観たくなりました。


"Sur les Pointes avec une Etoile" Isabelle Ciaravola, Master Class

アンドレイ・クレム&イザベル・シアラヴォラ
日本コロムビア
2013-05-22


Eleonora Abbagnato
TDK
2006-05-01



https://www.youtube.com/watch?v=BPluHfL9Ciw



Clairemarie Osta - Emeralds バランシンの”ジュエルズ”ではエメラルドが好きです(フォーレ)オスタ.



Marie Claude Pietragalla ピエトラガラのオディール

https://www.youtube.com/watch?v=2W4jJ_hcsp8
エトワール任命の瞬間...

手作りのイースターエッグを今年も飾る ヴァニティ模様替え モーリス・ブランショ Le Tres-Haut 他


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