

図は、以前に記事にした、「科学技術の未来を決めるのは誰か」について読み記事にしたときから留意していたものである。http://ousia.livedoor.biz/archives/52417089.html

岩波書店
2006-01-20
この本について個人的な読書メモを書いたとき、UK-JAPANのメンバーでもある研究者の方からもコメントを頂いた。失敗を研究分析する仕事は、通常欧米はじめおよそ科学的先進国では当然のように重視されている。
しかし、我が国のほうはどうか。それが「科学技術の未来を決めるのは誰か」には端的に2つの図で、また1章を設けて説明されている。
詳しくはぜひ本書を通読してほしいのだが、この失敗を誘発する組織の図をみてほしい。いわゆるトップダウン式であり、仮に(便宜上右とか下という語を用いる)右下の末端の部署あるいは役割をもつ人がミスをするとする。問題が全体に関わるため上に報告すればよいのだが、仮に上に報告することが自らの保身や上司(便宜上こう呼ぶ)が自らの監督不行き届きを懸念してさらに報告をしないで済ます場合、問題はまったく共有されなくなってしまう。中心にちかい部分がフレキシブルに機能し、報告を正確に把握してさらに報告し、その解決方法が組織で共有されて解決の方法をとれば、問題はない。しかしこの組織図ではトップは何をしらないことが増え、トップダウン方式ゆえに下からの、つまり現場からの声は届かないことになる。常に状況に応じて問題解決していくのが望ましいのだが、気が付くと手遅れ...これはかつて失敗し、消滅した日本企業に多い図式であり、多くの病院でもこのシステムをとっていることが多い。臨床の情報がまったく伝わらず、かといって現場の裁量は大変に小さく、何もできない。
(この図を見た時に、グリルパルツァーの裏切りと事実隠匿を思い出した...)
明確な役割分担に変わり、問題の共有がなされない樹木構造。
同様に、失敗の原因の階層性も注目すべきだろう。
この本が出てからすでに年月がたっていても、未だにこうした構造を目にすることが多い。
今日の日本の場合、例えば原子力であるとか...政治であるとか、「未知の領域」はいわずもがな、この問題解決も緻密に行う必要があるのだが、どこか思考停止状態になっているような、または全く情報が入ってこない。
いわゆる不景気、経済的な問題については5、6の階層も問題である。もっとも多数の人が個々に責任がある状態で日常を送っている。
現在の問題として大きいのは第4階層である。政治判断、組織怠慢、行政・政治の怠慢、であろう。あまりにも内向きな指向が失敗を誘発しており、指摘されてもまだ自覚されているかもわからないありさまになっている。
その階層をみても失敗を繰り返すための要件があり、その根本を指摘する向きもあまり多くはない。
個々の事例に対しての批判はあるが、批判的検討がされておらず、何がもっとも失敗つづきになっているのか(年金運用のミスとてこのピラミッドの中にあるではないか、敷いてはそれらが社会不適応という問題にもリンクしている)・・・・
何事もそうなのだが、うまくいっている時こそなぜうまくいったかを検証する必要があり、それをモデル化するのだが、当然失敗したときにもその分析は行われる。
しかし、上手くいったときは、それきりで満悦してしまい、上手くいかないときにも検討をしない、これが失われた20年であり、失われていきつつある平成の世の二十数年になってしまっている。
懸念を通り越して、しばしば呆然としてしまう時もあるほどだが、こうした懸念を持つ人たちが少しずつでも問題点を整理して言葉によって現状を捉え、必要な情報を得て考えることが必要な時期にあるのではないか。
すくなくともこの時代に生きているものとして...
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