
東京都美術館で開催中のボッティチェリ展にようやく行って来ました。
今回は全体の構成や作品をざっとみるつもりで金曜の昼前に行ったのですが、・・・それでも団体のお客さんなどでかなり混雑していました....次はまた時間をずらしていってみようと思います。
個人的に、あるいは研究分野的な興味から気になった作品を羅列してみます。
・ピエトロ・トッリジャーノ(に帰属する) ロレンツォ・イル・マニフィコの胸像(彩色テラコッタ) 1515-20ごろ
パッツィ家の陰謀でジュリア―ノ・メディチが殺害された後につくられたロレンツォの胸像。かなり大きく、肖像画よりもロレンツォの実像がわかる胸像だと思います。
その前に
<<ラーマ家の東方三博士の礼拝>> ボッティチエリ 1475頃 テンペラ画がありますが、この作品はゴッツォリあたりから出てくる聖画主題ながらおもな役割は集団肖像画の系譜。
コジモ・イル・ヴェッキオが中心の三博士の中心におり、イエスに拝謁している。会場で後ろの男はだれ?と聞いてますがヨセフですね;その上の精霊の鳩。
三博士のうちジュリア―ノ、ロレンツォが描かれていて会場の説明ではどちらがどちらと明確には書いてませんが、ロレンツォ・イル・マニフィコの肖像画は夥しくあり、(逆にジュリア―ノはミケランジェロの彫像でも似せてはいない)会場の説明を参照していうならば、Cがジュリア―ノ、Dの人物のほうがロレンツォではないかと私は考えています。
孔雀と古代遺跡が左右にあるのもこの時代のFirenzeのマギの礼拝テーマの特徴のひとつです。
古典古代憧憬がはっきりあらわれています。もちろんこのサンドロ(ボッティチェリ)の自画像は有名です。
洋書版の芸術家列伝(ヴァザーリ)のほうは、フィリピーノが書いたボッティチェリの肖像が表紙になっていることが多いですが。
ポッライウォーロはポルディ・ペッツォーロ展で初めて日本で紹介されて以来(美術史ではかならず学びます)また作品が来日しています。<竜と戦う大天使ミカエル> 1465 ステファノ・バルディーニ美術館(Firenze)より。この作品はFirenzeではみてなくて初めてみました。通常は竜(異教的なものの象徴)と戦うのは聖ゲオルギウスが多いですがこの作品はミカエル。この時代のミカエルには割と白い羽は珍しいように思いました。
アルギュプロスのアリストテレス「論理学」ラテン語翻訳彩色写本
ラウレンツィアーナ図書館より。これは貴重ですね...
フィリッポ・リッピ
<聖母子と天使たちおよび聖人たちと寄進者>
聖画聖母子像は、有力市民が教会へ寄進する意味で画家(工房)に絵画(祭壇画)などを依頼して作成されるケースが多いが、注目したいのはこの時点ですでに寄進者が聖母子と聖人たちと同サイズで画面上に描かれていること。もっと中世ですと聖母子がとても大きく、寄進者(人間)はとても小さく描かれることが多い。
ギリシア正教イコンなどでは、さらに神およびキリストはかなり大きく書かれます。
だんだんとルネサンスになると寄進者が聖人らと同サイズになり、さらに遠近法を駆使した、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂のマザッチォのフレスコ画はぜひFirenzeにいったらみなくてはなりません。
手前にアダムの死。
こういうところを観るのも時代ごとの思想や価値観が反映されているところです。
たぶん二回にわけて書き留めないと覚書がながすぎると思うので、チラシ告知などであまり紹介されていないがとても価値が高い作品について。
・フィリピーノ・リッピ <聖母子 洗礼者ヨハネと天使たち(コルシーニ家の円形画) 1481-82
とても大きなトンド(円形画)大抵はトンドは結婚・出産などで一族の祝祭を記念して製作・発注されるがこの作品はとりわけ大きいく精緻かつテンペラ画としても素晴らしい。
フィレンツェ 貯蓄銀行コレクション 。よく来日してくれました。
背景の風景、空間の遠近法、天使たちの優美さ。壁龕装飾と大理石の床の計算された構図。
フィリピーノのほぼ最高傑作に近い画風と特徴がよく出ているしほとんど主線もきえている。背景には空気遠近法も用いられている。
フィリピーノ・リッピ
<聖母子と聖ステファノス 洗礼者ヨハネ> プラート市立美術館
フィリッポ・リッピ
<受胎告知のマリア 大修道院長アントニウス 大天使ガブリエル 洗礼者ヨハネ>1450頃
この時期のリッピのガブリエルの優美さ。洗礼者ヨハネはフィレンツェの守護聖人なのでこの作品ではかなりそのニュアンスが強い。衣装なども。(ジョヴァンニという名前が多いのもそのためです。洗礼堂もそうですし、バッティスタという洗礼名もヨハネを指している)
図録でも大きくとりあげられているのでよく観られます。
アペレスの誹謗 ボッティチェリの作品についてはまた別記します。
アペレス古代の画家を文献でおそらく読んでいたフィレンツェではアペレス時代の絵画を再生することもルネサンス絵画のひとつの目的だった。製作理由については諸説あるが、今回数年ぶりにみたとき、影の表現が見事。と同時に・・・・真実の寓意には影がない。これこそが真実在であるためだろう。・・・・ぜひ同時代のフィレンツェが古典世界、科学、思想史、哲学、語学多言語文化であるということを興味にそって調べてお読み頂きたいと願う。










本文はのちほど追記します。
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