

2日の昼公演、芥川龍之介の恋 木ノ本嶺浩 一人芝居(渋谷 セルリアンタワー内)にいってきましたが、京都のこと(日本美術史的なことと移動する中での感慨)彼の芝居とこの企画のすばらしさについて、それからお芝居をみていて気が付き考えたくなることしかいまはありません。
重要なことからいいますと、彼(木ノ本嶺浩氏 演じるところの芥川)を同時代に共にその事象を共有しつつも、上方から俯瞰する感じの実感がありました。
舞台は向かって上手方向にセットが一部組まれ、グランドピアノが配されており、芝居の中で数回、ブリッジ状の会場を嶺君演じるところの芥川は走り抜けます。 1人芝居ですが、1人を演じるわけではないのです。斉藤茂吉との会話、漱石に手紙をかき、着いた頃にあいさつにいくことを相談する彼、そして叔母の存在。
彼自身が生まれるのがはやかったのでしょうか。大学にいる頃にはモリスが卒論なので知識に飢えることはなかったでしょう。もう少し時代が異なり、もしプラトニズムやアリストテレス、ソフォクレス、アッシジのフランチェスコやトマスと出会う機会、学術的時代であれば、彼の魂は落下と上昇を急旋回しなくても作品をかけたのであろうかと。
嶺くん 略称失礼、芥川の作品にはいくつか皆それぞれにであってきていると思います。でも芥川龍之介について、執筆もその背景やきっかけも、彼の苦悩と、自己嫌悪するほどの自己顕示意識、トラウマ、満たされぬもの、それらをこんなにリアルなものとして演じる その時から他者と生きていました。
素晴らしいかったし、観られてほんとに良かったです。
そして彼がセットの一番高いところから客席を見下ろす形で、言葉をいうとき、それは芥川の自問自答であって同時に客席への了解と問いかけのことばとなっている。
それに呼応し、あるときは傍観者の(実際の世界、世間、社会でもあるような)一人となって、彼の生活や執筆の契機にたちあう。

企画、構成、音声(ピアノ生演奏と役者である嶺君がとても呼吸をあわせており、SEもまた大変効果的だった、それらが一体化して自然に嶺君の演技や言葉に集中できたのです)大変、質が高く、こまやかなものだった。そして観た後のわれわれが、この芝居と芥川という作家自身、作品自体、演じた嶺や弾かれた楽曲、そして演じられた時代などを省みるきっかけになるものが多大に、豊富に含まれていた。
素晴らしいと思いますし、前日まで奈良にいたので帰宅後数時間後には渋谷に向かったわけですが、観に行けて良かった。

実は夏の始まりをこの嶺君の芥川を見るんだと思って過ごしてきたので、
まだ2日の余韻のままなのです。しかし今週もやることはたくさんある。
あの世界といきつもどりつ芥川が生きた時代を回顧しつつ、・・・
観ていて思ったのは、映画 「ラフマニノフ」をみたときの感じに少し近い感覚があった。
だから、これはこの時間を映画として嶺君をまた中心に、ル・シネマで上演しているようなヨーロッパ的な時間(つまり近代日本が抱えたギャップ)として映像を丁寧に描いたら、いいものが出来上がるようにも思えました。
その意味でもぜひ、DVDになってほしいお芝居・公演でした。
一緒に観た方も、「芥川をあそこまで顕在化させるとは、驚き・・・・」と言っていましたし、このあと2公演するということにも。なんとなく会場をはなれがたく、セルリアンタワー内にいました。
写真等、追記はまた後ほど。(アンケートも今回は郵送する予定)

パンフレット。リーフレット形式でチケットホルダーにおさめられています。
これはこれでデザインも読むのにも保管にもいいかも。並べてみました。
芥川の家計図(彼の生の背景)から作品年表もはいっていますから、もしお芝居を観に行けなかったかたも、公式通販が始まったら観てみるとよいと思います。内容がよい。

写真はシーブリーズ。
今公演中か....と思いをはせながらセルリアンタワー内にいました。
バリで飲んだシーブリーズは果汁がたっぷりだったんですが、渋谷の40回ではすっきりした味わい。
時間とは1時間半でも、まるで20年のときを共有することができる、それが芝居ですがどこか映画的なものの感じました。先ほどもいいましたが、濃密なのです。一人芝居なのに、嶺君演じる芥川しかいないのに、他の人物、移動したところ、それらすべてが背景、風景、環境の変化、停滞、焦燥などあらゆる感情はもちろんのこと、周囲の変化と対峙している人の背後にいる人の表情までもが客席から(すくなくとも私には)わかるところが、凄いと思いました。


(あとあらきさん、具合がわるい間に先行申し込み忘れて嶺君の芝居にいく途中の地下鉄でチケットとりましたよ。)
・・・・嶺君の「芥川龍之介の恋」はDVDにしますよね?


芥川龍之介の恋
出演:木ノ本嶺浩
脚本:赤澤ムック
演出:石丸さち子
音楽・演奏 日野悠平
美術: 小池れい
照明:愛星華鈴
音響効果:天野高志
衣装:EIKI

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