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万有引力が手掛ける初の泉鏡花作品 <夜叉ヶ池> 音楽も新作とのことで新宿御苑前の劇場まで観に行ってきました。万有引力は、世田谷パブリックシアター 奴婢訓 以来おそらく2年ぶりくらいだと思います。いやもっと前でしょうか。しかし、実は10代のころから観ていてるカンパニーでもあります。
泉鏡花作品の舞台は、以前歌舞伎座(旧)の坂東玉三郎主演の舞台を観て以来です。
重要なことから。
舞台装置と演技、台詞というよりも語られそこで発される言葉そのもの、音楽、照明、マッチだけで照らされる闇、闇の中からうかびあがる切り取られた瞬間瞬間に見えるもの、夜叉が池の世界を音楽、言葉、映像演出、照明、なにより役者の言葉と演技(といっていいのか、演技を超えた時間を作り出す)、この一体感が素晴らしい。
泉鏡花の世界。夜叉ヶ池を守る鐘つき。50年前にこの池のある山へ迷い込んだ旅をしている荻原は、守り人の老人の死に際して言葉を聴く。一日に3度しか鐘はつかない。しかしその鐘をつかねば、夜叉ヶ池の水はあふれあたり一体の村は水に飲まれて死滅する。その言葉から真実を読み取った伯爵の三男である荻原は、一度だけ鐘をつくことを決める。しかし、そこに美しい女百合があらわれ、次の鐘もつく。そうして3年あまりの時間が経過する・・・そこに京都大学の教授である同窓の男が現れる。君は荻原ではないのか。なぜこのようなところへいるのだ、君の周囲の人たちは君を探している。行方がわからなくなりどのくらいの時間がたったのだろうか。
その鐘と夜叉ヶ池がある村人たちは、東京から来た荻原を受け入れない。あの変わり者の鐘つき同様、といって痴れ者だ変わり者だと揶揄する。そして萩原を受け入れている百合も疎外され、あの女は蛇で人ではないのではないかと笑いものにしつつ虐げる。
他方、夜叉ゲ池の中。夜叉とよばれる姫は文を受け取り剣ヶ峰へ向かうという。
しかし数百年の取決めであり、約束どおり鐘が6時間ごとにうたれる間は、それはできない。さすれば、水は氾濫し辺り一面の村と田畑は水に沈むためである。いさめられ説得されるなかで、かつて村人が行った村の娘を豊作あるいは雨乞いのための生贄にだす風習を語る。
なぜ人間はおろかな過ちを何度も繰り返すのか。かつて贄にされた娘は言葉すくなく語る。
村では雨乞いの儀式を行い飢えないための準備をするという。村の学校教師は過去の記録をとりだし、物知り顔で迷信ともいえる娘をいけにえにし、夜叉ヶ池のそばで牛を殺し、尾と顔を備え、肉は村人で食べれば干ばつは収まるという。越前の国ではそうしてきたのが習わしであると・・・
村人たちは、百合をいけにえに選び出す。
夜叉ヶ家をみようとでむいていた山沢と荻原は嫌な予感がする、子の人形を抱いて夜叉ヶ池をみずに村に戻るが・・・・・
活きたことば、語られる台詞の明瞭さと簡潔な中に含蓄がありユーモアもあるこの演劇。観客は驚愕と思索の間をさまようだろう。映像と音響がまた素晴らしい。
演劇や舞台を観るとき、果たして再現可能なのかと思うことがるが、万有引力の舞台は、その場で観客もともにその空間を作り上げそれを目撃し共有する存在となる。
だから応えは行って観なければならない舞台なのだ。
仮に観に行けなくても仕方がない、と思う舞台もある。しかし万有引力の公演は観なくては始まらない。
観ると現在と過去と、変わるもの変わらぬもの、真なるもの、偽なるもの、立場が異なるもの、さまざまものを思い出し発見する。
どうしても観たい演目でしたので、詳細が発表になる前から問い合わせさせていただきました。
Twitterほかウェブでも公演情報は出ていますので気になったかたはどうぞ。
私が一番最初に観た演目「ある家族の血の起源」(おそらく高校生時)や「書をすてよ町に出よ」「人力飛行機ソロモン」「盲人書簡」などが入った5枚組CDを買ってしまいました...
カスパー・ハウザーやダーウィンもまた観たいと懐かしく思いつつ、まるで古くはなく、むしろ情報が錯綜し、その情報に錯綜させられ、かつての教訓も軽んじて破壊的な選択をしてしまう今日、あるいは迷信や盲信、他者疎外によって保身のみしか考えられぬ世情、それらに生命を奪われる人々・・・こうした現在ではよりアクチュアルなものとしても感じられた。
なにより純粋に時間を忘れる舞台空間、台詞がもつ言葉の力、役者による異世界の創造、音楽音響のこだわり・・・創るエネルギーに照らされた時間でした。
◎出演
高田恵篤 ・・・ 六道の辻の案内人 /与十
伊野尾理枝 ・・・ おくま(平作の母) /水龍女
小林桂太 ・・・ 斎田初雁(小学教師) / 十三塚の骨寄鬼
村田弘美 ・・・ 湯尾峠の晩年姥
木下瑞穂 ・・・ お通(村長の妻)
飛永聖 ・・・ 荻原晃
森ようこ ・・・ 百合/白雪姫
高橋優太 ・・・ 山沢学円
岡庭秀之 ・・・初代弥太兵衛 /村長 /虎枝の入道
森祐介 ・・・県の代議士 / 大蟹五郎
曽田明宏 ・・・ 三年前の晃 / 代議士秘書 /白男の鯉七
岩瀬明日香 ・・・ お定 /雹龍女
田中真之 ・・・ 平作(おくまの息子)/ 小鳥風呂介 / 鯖波次郎
前田文香 ・・・ 木の芽峠の奥山椿
渡部剛己 ・・・ 伝吉(博徒)/ 鯖江太郎
服部愛弓 ・・・ お蔦 / 影法師
今村博 ・・・ 鹿見宅善(神官) / 黒和尚鯰入
山本美里 ・・・ 夕顔 / 雪龍女
太刀川亮 ・・・ 野寺坊
作 ◎ 泉鏡花
演出・音楽・美術 ◎J・A・シーザー
構成・共同演出◎高田恵篤
・寺山修司の言葉展 2015年11月から 青森にて(青森公立大学交流会館)
・奴婢訓 Direction to Servants 3年ぶり再演 (2015年ブラジル公演 凱旋) 2016年2月5日〜高円寺
http://www.banyu-inryoku.net/
台本/寺山修二 原作/ジョナサン・スウィフト 演出音楽/J・A・シーザー
夜叉が池ということで、セピアひまわりを夜叉が池のグリーンをイメージして...
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奴婢訓再演、ということはやはり前回観たのは3年前ですね。(手術前ですね)
夜叉ヶ池を観たいと池へ向かうとき、この時期は山笹も生い茂ろうからと、晃が手に鎌を持ったときから、はらはらし始めます....!万有引力で鎌、もうこの瞬間から、それから三年前の晃が出るあたりから・・・・(る典で木ノ本竹中半兵衛が私にすべてお任せ下さいといった時以来のはらはら加減。)
伊野尾理枝さんは以前から好きな役者さんですが、今回も素晴らしかった。小林桂太さん、高橋優太さんも昔から観ている役者さんだと記憶している。
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7月青森寺山修二演劇祭 11月ブラジル 2016年へ・・・・また観に行きたいです。
鏡花の世界は、現代性が魅力なのだろう。そしてそれが古くならない今日の悲しさよ、未來を観て過去に活きよという不条理。
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