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Twitterでも情報を頂きまして大変ありがたいです、ベジャール「第九交響曲」が放送されます!
DVDにもなるとのことです。また国外でも放送されるそうです。記念碑的な作品と上演になりましたものね。


第二楽章の大貫真幹さんが素晴らしい。2楽章はじまりから終わりまで、目が離せなかった。第二楽章はまるでプリマヴェーラのような歓喜に満ちている。ゲーテが目指した自然への憧憬、回帰、生成といったものが、音楽に詩をのせるように描かれており、ベジャール・バレエ・ローザンヌのダンサーたちがそれを見事に踊り、謳いあげていく。キャサリーン・ティエルヘイムが躍ったパートは、映画「エトワール」ではパリ・オペラ座のアニエス・ルテステユが躍ったパートだった。比べるわけではないが、ベジャール・バレエのダンサーたちは、ベジャールの振り付けを理解しそれを音楽的に踊っていて本当に魅せられた。理解(Understand)は心とともに行くという意味で、意味と感情を昇華させて自分のものにし、表象することだと思うが、まさにそういった舞台だった。

マリ=アニエス・ジロが躍ったパートは上野水香が躍っていたと思うのだが彼女もまた自分のものとして表現していた。上野水香が良いと思ったのは同じくベジャールの「カブキ」あたりだと思う。そして今とても安定しつつバレエが表現するべき外部への精神性を表現できているダンサーになっていると思う。ソリストとして柄本弾も良かったが、梅澤紘貴、岸本秀雄も良かった。梅澤、岸本は柔軟で、第1楽章のコアを支えていたと思う。
ただ若干、東京バレエの第一楽章は目線が低く、外周上のラインを意識しているように見えたところだけが勿体なかった。
私は9日のマチネを観たのだが、第3楽章のソリストは上野水香が躍ってもよかったように思う。上野水香のパートを一日は奈良春夏か高木綾が躍っても良かったようにも思う。なるべく役を引き継ぐには、こうした経験を得なければならないと思う。だから第二楽章に東京バレエのダンサーがベジャール・バレエダンサーと一緒を躍ったことは今後貴重になると感じている。

第三楽章、第四楽章の那須野圭右、オスカー・シャコンも良かった。第四楽章はさらに原子的な起源を表現していて、声楽ソリストとダンスが融合する。ここですこし実は混乱したのだが、音楽(目には見えない美)と舞踏(かたち、音律としての美)が同時にある場合、もはやどちらに集中すればよいのか!という氾濫が起きるほどだった。こうした機会はあまりないので稀有な体験だが、本来は同時には表現されない極地が舞台上におきていた。ベジャールの初演も350名で表現されたらしい。

声楽ソリストではバスのアレクサンダー・ヴィラーノフが良かった。

今回、全部の楽章を聴き、観ることが叶った。20世紀から21世紀の初めにかけてベジャールが行おうとしたことを再確認したように思う。ベートーヴェンでは第九交響曲では第二楽章、第七交響曲では「神々の舞踏」がおそらくベジャールの音楽的、詩的源泉なのだと思う。目に見えない詩を形作り、インパクトある舞踏言語へと再構築しなおされた世界だと思う。それはつねに原文を読むような行為と、今日的な意味や響きを乗せて上演されなければならないと思う。

リアルタイムで経験できた舞台を忘れることなく、放送される舞台もたのしみに待ちたいと思う。




NHK BSプレミアム 「プレミアムシアター」

◆放送予定日:12月22日(月)午前0時〜(日曜深夜)




<東京バレエ団創立50周年記念シリーズ 7>

「第九交響曲」

 

テキスト: フリードリヒ・ニーチェ 

音楽: ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン

オリジナル美術・衣裳:ジョエル・ルスタン、ロジェ・ベルナール 

照明:ドミニク・ロマン

衣裳制作:アンリ・ダヴィラ

 

指揮:ズービン・メータ

演奏:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

出演:東京バレエ団、モーリス・ベジャール・バレエ団 

 

ソプラノ:クリスティン・ルイス  

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子

テノール:福井敬 

バス:アレクサンダー・ヴィノグラードフ

 

パーカッション:J.B.メイヤー、ティエリー・ホクシュタッター(シティーパーカッション)

合唱指揮:栗山文昭 

合唱:栗友会合唱団


 

◆主な配役◆

≪プロローグ≫

 

フリードリヒ・ニーチェのテキスト朗読  

ジル・ロマン

 

 

 

≪第1楽章≫

 

柄本弾

上野水香

 

梅澤紘貴 三雲友里加

 

入戸野伊織  高木綾

岸本秀雄  奈良春夏

 

乾友子、渡辺理恵、村上美香、吉川留衣、岸本夏未、

矢島まい、川島麻実子、河合眞里、小川ふみ、伝田陽美

 

安田峻介、杉山優一、吉田蓮、松野乃知、原田祥博、

和田康佑、宮崎大樹、上瀧達也、山田眞央、河上知輝

 

 

 

≪第2楽章≫

 

キャサリーン・ティエルヘルム

大貫真幹

 

コジマ・ムノス、アルドリアナ・バルガス・ロペス、大橋真理、

沖香菜子/キアラ・ポスカ、クレリア・メルシエ

 

ヴァランタン・ルヴァラン、ウィンテン・ギリアムス、

ドノヴァン・ヴィクトワール、マッティア・ガリオト、アンジェロ・ペルフィド

 

 

 

≪第3楽章≫

 

吉岡美佳

ジュリアン・ファヴロー

 

リザ・カノ、ファブリス・ガララーギュ

ポリーヌ・ヴォワザール、フェリペ・ロシャ

 

ジャスミン・カマロタ、渡辺理恵/キアラ・ポスカ、

カルメ・マリア・アンドレス、アルドリアナ・バルガス・ロペス

 

スン・ジャ・ユン、エクトール・ナヴァロ、

ヴァランタン・ルヴァラン、ハビエル・カサド・スアレス

 

 

 

≪第4楽章≫

 

 導入部 

 オスカー・シャコン

 

 これまでの楽章のソリスト

 柄本弾  大貫真幹  ジュリアン・ファヴロー

 

 「歓喜の歌」

 オスカー・シャコン(バス) 那須野圭右(テノール)

 マーシャ・ロドリゲス(ソプラノ) コジマ・ムノス(アルト)

 

 フーガ

 大橋真理、ウィンテン・ギリアムス

 アルドリアナ・バルガス・ロペス、エクトール・ナヴァロ

 

 フィナーレ

 アランナ・アーキバルド

 

 モーリス・ベジャール・バレエ団、東京バレエ団

 アフリカン・ダンサー(特別参加)

 


タイムテーブル

14 00〜15:30(休憩なし)