『ノアの方舟』といえば、ノアと家族が周囲の嘲笑に関わらず、神(発音不明かつ不可能であるヤハウェであろう)大洪水に備えて地上の動物・鳥類などを一つがいずつ方舟にのせて・・・・という話がすぐに想起されます。実際、旧約やその関連の物語、昔作られた映画などはそんなイメージです。私は幼少のころに見たこのイメージで、休日だし映画館で見たほうがいいかな、という思いから家族で観てみました。
しかし!確かに主題は『ノアの方舟』ですが、上のようなイメージで見に行くとびっくりします。
これから見る人もいらっしゃると思うので詳細はともかく、雑感としていくつか。
ノアの方舟エピソードがいいなあと漠然と思うのは、地理気候的に中東で、自分たちの手仕事で方舟をつくり、動物たちと一緒に洪水をのりきり、最後はオリーブの枝を加えて陸地を発見・・・というどちらかというと長閑な部分もあると思うのですが、一神教および選民テーマが北方の力・権力、物質的価値観に結びつくと・・・。
物語のイメージは一新して、家父長制の不条理さや権力力、自己中心的な「愛」(本来はこの言葉は用いないが)などが、問題対象として浮かびあがってきます。
というか、それが今回の主題のようにも思えてきます。
主観による判断は危険、判断をする知性と理性が必要だと一神教圏で長い間問われてきたのもうなずけるというか。
とにかく、ここはニュージーランドか?ヨーロッパの北部かというような地域、現在のユダヤ・キリスト教の多数者としての人々が骨肉の争いをしているので、ロードオブ・ザ・リングの第二部(映画の二部が苦手・・・1部が好きです)か!?と思ってしまうようなシーンが。身なりも当然最初の地理的なところとは似てないので世界観が完全に北方です、まあどこに広まっているかということを考慮するとそうなるのでしょうけれど、このギャップは凄い。
凄い破壊力なのでレビューの平均が★★★3に届いてないのも頷ける。
(でも見て損とは思いません、全体的に疲れていないときにお勧めします)
カインとアベルの話がより関連しているのはいいとは思いますが、カインが解く人間の意志、これも重要な要素ですが、真に人間的であるということは「誰の命令にも屈しない・服従しない」ことであって理解と強調と意志は持つが「命令に従う」ことは人間性の条件とはいえないと思うのでした。
自由意思とは何かということも問いているのでしょうか
ヤフェトがボッティチェリの天使にとっても似ています。
それから方舟を自分でつくるのではなくて、堕天使(DQの溶岩魔人のようなビジュアルで、要素が似たものとしてアバウトにたとえるならエヴァンゲリオンみたいな)が使役されて方舟をつくるというのはどうなのか・・・
ノアが方舟を作るからヨセフの家系が大工で、現在でも父親の日曜大工が良い行いに位置付けられてるのではないでしょうか・・・気になりました。
生まれてくる子をめぐってのあれこれは・・・これはまあ当然理不尽さを全面に出すためでしょう。
確かに「イサクの犠牲」の話でもドラマの主要素は理不尽さと、絶対者に対する「試練」なわけですけれども。アンソニー・ホプキンス演じるところのノアの祖父(現在の人間の曽祖父的な役割なのだろうな...もはや隠者を超えた存在感・・)が与えた種子から森ができるところはジブリ映画かと思った...。
何なんでしょう、ノア役がラッセル・クロウな時点ですっきり見られない気はしていましたが。
違う人がノアの役を演じたら、違う感想が生まれるんでしょうか、もうすこし説得的あるいは何かしら彼に共感する要素が上がるのでしょうか。
堕天使が元の天使(光り高次存在で飛翔する智者)のイメージ・場面は良かったと思います、堕天使が地上から解き放たれて光に戻っていく場面は美しいです。こことヤフェトは美しいです。
いろいろ社会的な問題として、問われにくいことを描いたのかとも思えてきます。
DVDで見るか劇場でみるかといえば・・・、見たことは後悔しないし、この映画は強制的に着席して観たほうが生の感想を持ちやすいと思います。
(しつこいですが私は6月末から疲労がたまっていて過敏性腸炎が数年ぶりにでたりしていた・いるので余計に)
疲れていない日のレイトショーなどで見てみては。。
私は舞浜のオークラに休息にいくときに、シネマ・イクスピアリで観ました。
休息のために見るような映画ではありませんでしたが(いやはやまったく・・・)、「マレフィセント」はまだまだ夏の終わりまでやっていると思うので、久々に『ノア』のエピソードを思い出しながら、見てみてはどうでしょうか。
神という言葉は用いられておらず、創造主(クリエイター)でした。
聖書考古学などは比較的新しい領域で、それが史学的であることを超えて宗教性の正統性のために用いられると複雑になります。
セム・ハムの話はまた別のモチーフになっていくと思いますけれど、一神教の多層を見ることは重要だと思うので記事にします。私も平均3★をつけるのはためらう傾向に倣って2★にしますが、上映しているうちに観ることはおすすめします。(複雑だ)
旧約の神は「裁き・怒れる」神で、新約になると「赦す・慈愛」という要素が生まれます。
イスラームも(もとはセム系一神教で旧約と新約を聖典にするところは同じですが、イエスの解釈などが違う)メッカ時代とメディナ時代は神の性格(性質?)が異なるのですが、人々の間に広まるときには後者の「赦す神・慈愛・恩寵」の要素が全面にでたときです。
映画 『ノア 約束の舟』
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