幻想芸術展2014 (Fantastic art show 2014)の展示に行ってきました。

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5月4日から10日まで東京交通会館(有楽町)で行われています。
入口のボッティチエリを模した作品製作のディスプレイも良い。

古賀郁さん、浅野信二さん、伊豫田晃一さん、中嶋清八さんほかの作品を拝見してきました。

古賀郁さんに感想をお伝えしたところ、気になった作品、<PROCRATIO>の作品画像を提供して頂きましたので、記事に掲載させていただきます。

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<PROCURATIO>
180mm×140mm  テンペラ・油彩 キャンバスボード


フィレンツェの写本装飾に観られるような精密で鮮やかなモチーフ、ケルビム。柱頭の描写も繊細。どことなく13世紀ビザンティオンから15世紀フィレンツェを想起させる作品。
フィレンツェ公会議はコジモ・デ・メディチが発起人として初めてビザンティオンから140人のギリシア人たちがラテン圏にやってきた出来事として記録されている。ゲミストス・プレトン、クリュソラスらのギリシア語の公会議での発言を聞いていたピコ・デッラ・ミランドラやマルシリオ・フィチーノらはその内容に感化され、ギリシア原典の読解・翻訳・写本収集が始まった。
偽ディオニシオスの『天上位階論』の中に天使の意味という項目がある。またピコもこれについて考察しており、ケルビムは第二位かつ智天使とされている存在。
古賀さんから写本などもコンセプトになっているとコメントを頂いたのだが、たしかに偽ディオニシオスも偽書として長らく人々の興味を引いた。どこか意味を探したくなるような作品だと思い、何度となくその前で時間を過ごしていた。
本来的な天使の位置づけは、不死、肉体を持たないこと、飛翔するもの、メッセンジャーであること、一瞥して知る知者、秘密を告知するもの、である。こうした存在が憧憬を集めていたのはペストや運命論への懐疑、戦争などが関わると思われる。ルネサンスは甘美なものを想起する人も多いが、実際の教訓は「死を忘れるな」であり、有限性の自覚が強かった。
ケルビムは智天使であり、一瞥して知る存在として想定され、時と場所という人間に制限されたものを超越する。

古賀郁さんのテンペラ画は色彩と筆跡が美しいものが多く、この作品も鮮やかな色彩とそれでいて古い時代への回帰と憧憬がコラージュされていて興味深い。筆跡の後もないフィニの状態で仕上げられており、12世紀ルネサンスからのビザンツとラテン世界の交わりもどこか思い起こさせてくれるように感じた。

他の作品についてもタイトルを頂いたので記載します。

<Zur Ambivalenz Ritual>
 220mm×160mm  油彩・ボード

ろぅささんと悠雅くんをモデルにした絵。観たときに実際のモデルさんがいるのだろうなと感じた作品で帰宅してから詳細を知りました。


<節制 ・Temperance >100mm×148mm  油彩・キャンバスボード

寓意・節制をテーマにした天秤を持った男性が中心に描かれている。少しヴァニタスの要素も感じる。他の寓意も観てみたいと感じた。新作で、作成途中の写真をFBで観ていたので実際のものを観られてよかった。

東京展は10日まででこれから大阪へも出品するとのことです。


画像は作家・古賀郁さんご本人から寄せて頂いたもので、許可を得て掲載しています。


会場は有楽町駅前イトシアに隣接している東京交通会館2階。
前々回のIFAA 幻想芸術展でも拝見した伊豫田晃一さんの<結び>、中嶋清八さんの<ル・マスク・ドゥ・ファム>(水の音)、浅野信二さんの4つの連作(これは新刊のゴーメンガーストの表紙。その原画が展示されました)などが印象に残った。

マーヴィン・ピーク著「ゴーメンガースト」三部作+近年発見された幻の続編「タイタス・アウェイクス」が創元推理文庫より近々刊行.
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488534028



マーヴィン・ピーク&メーヴ・ギルモア
東京創元社
2014-06-21




澁澤さんがマニエリスム礼賛の立場を推していたように、また先日のサン・ドニ聖堂のシジェールの言葉にもあるように、「貴き業」は人を引き付ける光を発している。表象された形、色、造詣から無形であるはずのスピリット(精神)を感じるが故に、芸術としての内省作用を持つのだろう。