あまり邦画をみないのですが、和田琢磨さんが出ているとのことで観てみました。
主人公を演じた浜尾京介さんが思いの外、よかったです。心情描写に長けている。

この映画では英国式紅茶が鍵なのだけれど、花、料理、飛行機、などが価値形成をしている。これらが象徴する価値はすぐに物質的には儚いけれど、本質は他のなにものにも変えがたいプライオリティ、そしてプリマクラッセの価値には純然とした価値があるもの。
けれど、記憶のなかにある日常で体験した花や飛行機、紅茶は圧倒的にここにでいきるひとの原点として、イデーとしてかたられるし、それを大切にしてる。
それが、伝わるのがよい。

こういうことを、どうでもよいとする価値観は根強く、でも花や料理、紅茶なとがクォリティの定点になる。
紅茶は主人公(浜尾)祖父のホテルマンとの残された接点で、祖父はよき時代の追憶で象徴でもある。こういう生き方が難しくなって、浜尾演じるところの青年の環境が珍しくなくなっていることの対比。

浜尾京介が自宅寮?から走ってホテルに向かうところと、自分から率先して料理を仕上げてゆくところ、紅茶を真摯に入れ味を確かめているあたりがよい映像。
台詞で説明しないで、彼のアクションや表情、内側からの変化が感じられてよい。それにたいしての周囲のリアクションはすこし月並みなのだけど、

家人と観ていたら、演者の諏訪太郎氏を知っているとかで、駒込関係なのか荒れ地の詩人の会の繋がりで知っていると話してました。

賄いのごはんを食べているところや八ヶ岳の風景もよかった。もうすこし和田さんやほかのスタッフとの関わりも見たかったけど概ねよい作品と思えます。
オーディオコメンタリーふくめて三回みました。
場所が八ヶ岳高原なのも観た理由かもしれません。

観ていると美味しいアッサムのミルクティとウォーカーのショートブレッドが食べたくなります。紅茶をポットで用意して観るのをおすすめ。

浜尾京介さんは2月で活動休止とのことですが、演技とても自然て、考えさせるところもありよかった。
ちょうど観ているとき2月終わりで、さびしいような複雑な気持ちになりました。でも演じるという仕事は、そのものが生命で、それはずっと残るから。

役者の仕事は心身を違う役に分け与えて、生命を際立たせること、なのかもしれない。他者の生を生きることが、その人の生命にもなる。