根津美術館で春に開催されていた清麿展に脚を運んだので、この2話、特に第11回菊一文字のテーマはドラマの主題がよくまとまっていたように感じた。何度か観ても飽きることがない。

第1話では贋作の虎徹を巡る人と思想、価値観がそれぞれの人物をとおして描写される。
本物とは何か。
名・銘入りだから価値があるのか。価値や他を凌駕する特質をもつゆえに銘入りなのか。
こういうことは今日にもありふれていて、「名作だから」とか「人が褒めているから」「値段が高いから」ということで価値づけを決定すること(いや正確には価値を固定する・信じてしまう)ことはままある。バレエや演劇・舞台芸術、音楽だって、最初は「初演」があって最初の聴衆がおり、今日では上演すれば成功してあたりまえのような作品も初演では最悪の評判だった、などはよくある話である。逆もしかり。
「本物」とは何か。第1回では近藤(宅間)を中心にして、それらが描かれた。

第11回、最終回の前に放送されたのが「菊一文字」なのだが、それぞれも好きなエピソードで繰り返しみてしまう回の一つなのだけれど、最終回の前に、あるいみ快刀虎徹と対になるような菊一文字を持ってくるのが構成としても上手い、と嘆息してしまった。

これから始動するいわば生を象徴する虎徹の回(桜が咲いている)と、菊一文字則宗での沖田(辻本)の死への確信、決意、死を自覚したものだけが持つ力と煌き、小雪。張りつめた空気。

快刀虎鉄の回が近藤と土方による夜桜(散り際の桜)に対して、沖田とゆうさんが観て美しいと感じるものが福寿草なのもとても詩的。
福寿草は、まだ寒い時期にしずかに木下などに咲くのですがそれがいかにも春らしい。
(実家には福寿草が蝋梅などの木下などに植えてある)



こういう厳かで繊細な演出が、辻本さんや尾関さん(斉藤一)、加藤さん(山崎烝)らの演技と相まって良いのです。 各話を順番に観ているところですが後半に進んでしまうのがもったいない...。
前回も書きましたけれどお着物の素材や色柄が綺麗、絵になるのも好きです、おゆうさんの着物柄いつも可愛らしい。こういうディティールで人となりも顕れている。鴻池の羽織の素材や斉藤の紬など。美代さんのお着物と帯もさりげなく色合わせがいいんですよね。
細部の映像が好きです。床の間にある活花なども目が行く。
鴻池、近藤、土方が集まって茶室でたてられるお茶も綺麗にたてられている。(と茶道心得がある家の人間が言ってました)
ことがらだけを追わないから時の描写が丁寧に感じる。池田屋事件なども異聞として、山崎烝のエピソードを織り交ぜているところなどもいいと思います。(第5話)またこの回は沖田(辻本祐樹)が初めて喀血するのですがその前後の映像も好きな場面です。全12回のうち、芹沢暗殺(第3回)、沖田喀血と池田屋(第5回)、山南切腹(第6回)という構成も、単なる新選組描写というよりも時代性とパーソナリティ、不変の心情のようなものがテーマだから飽きないのかもしれません。言葉で語りつくさない作品だから評価が高い理由かと思います。
実際の時間(45分)よりももっと濃密に感じるのはそのせいでしょうか。
たまにこういう作品ってあります。(めったにないとも)

そういえばこの作品をみていて、THE KABUKI(東京バレエ)DVDが観たくなりました、顔世御前、平野先生の切腹場面がすさまじい緊迫感。高橋竜太さんの伴内も観たい。

清麿は全盛期の40代で自刃しています。理由は不明。上記の根津の紹介動画もいいのですが、館内で放送していた刀匠の技を紹介した映像がよかったのです。これはどこかで公開されていないものか。本当にすごい技術です。鎬を削る、刃波ってこういうことか、、、などなど。母方の実家には代々伝わる日本刀があるので知ってはいるのだけれど、あまり詳しくは知らないものなのですよね...そして純粋に興味を持つ方も外国人の方のほうが多いのかもしれない。

個人的には同じキャスト・スタッフの方での製作で続編か割愛されたエピソード、スピンオフなどが観たいのですが、辻本さんと尾関さん、加藤さん、宅間さんなどが出る忠臣蔵も観たいなと思っております。植木屋とか(歌舞伎の)外伝エピソードを入れたドラマなど良作になる気がします。

今の所私はツタヤ・ディスカス(オンライン予約レンタル)で視聴してるのですが、DVD購入しようかとも。


余談ですが私は東博の展示室が好きなのですが、行くと必ずこのあたりのコレクションは観ます。

http://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=3312
http://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=top

新選組血風録 DVD-BOX2<完>【DVD】
永井大
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
2012-01-21

新選組血風録
司馬 遼太郎
中央公論新社
1964-04-08

追記 沖田役の辻本祐樹さんが客演する舞台が7月から8月にあります。キャラメルボックス『涙を数える』池袋・サンシャイン劇場。 http://md-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201405130009"> 池岡亮介さんも同様に客演。 池岡さんが主演した映画の監督が、佐吉さんの息子さんと知り。短編の作品上映の時に佐吉さんからお電話でお知らせ貰っていたので巡り合わせにちょっと驚きました! キャラメルボックスをはじめて見る場合、ためチケなるチケットがあるようです。1000円にて初回は見られるそう。 こういう、幕見席的な取り組みはよいですね。中高生の学割もあるようです。 無事に観に行けたら感想書きたいです。