休日に出かけることが減っているので、映画を観るのも久々...(座っているのが痛い...というせいもありますが)




”風立ちぬ”を遅ればせながら観てきました。
感想は、やはりダイジェストや一般マスコミ評などからは物語や映像の細部も全体像も解らない、ということでした。もはやジブリ作品というのはジャンルとしてはマイナーなままにコンテンツとしては超メジャーという、それ自体がパラドックスをはらんだものとなっているように感じますが、今回はOPからメディアと広告産業のほとんどが「ジブリ/宮崎」に関わっている巨大なメジャー性質と、それが嘘に感じるような細かい作品だと感じた。多くの人が見ると思うが、おそらく半分の人があらすじと映像を楽しみ、ごく少数の人がその細部にある感情や意味、ディフォルメされた批評性やアイロニーなどを感じるのだろう。
一言でいえば、「非常に整理された、”ハウルの城”」のモチーフ。それが、戦前の日本という場所と時間を限定された状態でもう一度展開されている印象も。
しかし特筆に値すると思われるのは、背景や自然描写が大変に自然主義的だということだ。
自然主義は写実とは異なる。あたかも自然を目にしたときに感じるような美や壮大さ、残酷さ、永遠---などの生きた感情が起こるような「自然」を表現することを目指す。バロック音楽もそういう意味では自然主義の一面を持つが(「四季」のテーマはそれだといわれる)ほとんど一貫してそれらが人々の置かれた状況の前提として、毅然と表現されている。デジタル化された映像の場合、それらは失敗することが多かったのだが、この作品はそうした意味で特筆に値する、やはり映画館で観てよかったと感じた。
音響もまた、自然や爆撃、関東大震災に適度なディフォルメによってより効果的だったと思う。AKIRA(映画)で人知がコントロールできない力と恐怖に対して作られた効果と少し似ていると感じた。
ストーリーに関してはとくにここでは立ち入らない。しかし言われているような偏った機械賛美でも兵器賛美でもなかったと思う、むしろ、そのジレンマが控え目に描かれていたように思うし、創造と知識のネガディブな本性というもの(プロメテウス的な)が織り込まれていたように思う。

付言するとおそらく、「自分たちは設計家であっていい設計をすればよく、それがどう使われるかまでは考える立場ではない」という本庄の台詞がこの時代の知者の間違いだったのだろうとは思うのだが。設計者である前に、人であって、国やコミュニティの構成員としての意見が欠落するとき、判断可能な人たちが沈黙することによって知恵の運用がコントロールされなという結果になるのだ...(それゆえに、どのように(HOW)の知識と何のために(WHAT)の知識は同時に用いられなければならない...というのは今日でも課題だと思われる。

おそらくさまざまなテーマがあるのだが、それは映画を観るときには大して気にしなくてもよい程度に表現されている。だから表現主義の作品をみるような疲れは感じず、単にストーリーと映像を楽しむという簡単な鑑賞もできるし、深読みしたり記号的解釈をしたりもできる。
重要なのは、複数のテーマを持ちながら、それをマスに提供できることだろう。
なによりそれは宮崎作品の場合、技術なのだと感じた。テンポだとか世界観などもあるだろうが、とにかく技術でみせてしまう、そういった意味で、「もののけ姫」以降の宮崎作品として秀逸だと感じた。よく整理された「ハウル」という感想もそのためだ。「ハウル〜」を観たときに感じた制作者側の葛藤がかなり整理されて結晶化された印象。

(余談だが主題や展開を含めて、よくわからない部分も気になるところもあり、当時家設計で横浜から帰るときに疲れていたのもあってあの作品は4回も映画館で観てしまった...)

「夢」の世界が「地獄」と同意語というのも、現在だから描けるものだと思う。

「美しい」と繰り返し語られるが、この作品中の「美」という言葉が「きれい」とは区別されていることも重要だろう。

メディア上で最大公約数的に語られるプレスリリースや浅薄な「感動した」という感想と、自らが実際に観た内容の違いは大きい、作品は直に接しなければわからないということを実感させてくれる作品でもある。
前評判や引退の話題などが先行して私のように観ていない人も多いかもしれないのだが、映画館で見られるうちに一度見ておくことをおすすめしたいと思う。

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