「・・・ドナテッロについては、もうひとつ感動的な逸話がある。臨終の床にいるドナテッロの親戚がやってきた。彼がプラートに持っているわずかな農地を、遺言で彼らに残すように頼みこんだ。それに答えて、ドナテッロは次のようにいった」


「それは毎日そこで働き、苦労した百姓にのこすつもりだし、それが正しい。あなたがたは農地のために何もしないで、それをもらうことばかり考えている。出て行ってくれ」

結局ドナテッロは死んだが、サン・ロレンツォ(教会)のコジモのそばに埋葬された。
「コジモは生前いつも心を寄せ合っていたように、死後も身体をよせあっていたいと願い、遺言でそう命じたのである」


ヴァザーリの「建築家・彫刻家列伝」(白水社)および「フィレンツェ」(若桑みどり)より引用させていただく。

・・・ブルネレスキとドナテッロの逸話もそうだが、コジモとドナテッロの逸話をよむとき、私は、死に対する恐れと同等の他者への憐れみと優しさを感じ、時間の再生と永遠、つまり現在を真正面から認識した人たちの思いと言葉と行いだと感じて、何度も読み返してしまう。


私たちに世紀には、もはや商業化された誕生と死、子どもも、老年期も加齢することの意味もすべてが商業化されている....
このようななかで、人間的にあろうとすうることは難しい。

しかし難しい、優しい、手軽さが問題なのではない。

言い知れぬ、絶望感が足もとのすぐそこに、空いている。


ジル・ドゥルーズ 『原子と分身』を読んでいる。

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