芸術センター(月刊)に書いているブライアン・キース(歴史家)のコラムがいつも面白い。論点が明解で、価値観が共通していて、私が思っていること、疑問に感じていること、その先のことが具体的な指摘のもと書いているテキスト・コラムである。

http://www.art-center.jp/journal/index.htm

芸術センター


FREE雑誌なのですが、定期購読しようかと思っているもののひとつ。DANZA(ダンツァ)も定期購読しようとおもうフリー雑誌です。こういう非商業的な雑誌しか、メディアにならないのかも、と思います。

ブライアン・キースのテキスト、環境革命と産業 その2から引用してみたい。

「環境問題で問われるのは結果であり政治的プロパガンダや経営戦略ではない。環境産業というのが成立するならそれも良いが二次産業を壊滅させて生き残れる社会はない。感情論ではなく現実をみるべきだろう。(中略)

 先進諸国は環境対策車に補助金をつけ買い換えを消費者に促し、景気浮揚と環境対策の一石二鳥を図ろうとしているかに見える。しかし、ここには冷静な環境対策と歴史研究がこぼれおちている。製鉄業は最大のCO2発生産業であり、アルミニウムは電気の缶詰、プラスティックは石油固形物と呼ばれている。公害をたれながして造った自動車ならせめて長持ちさせればよいが、それでは自動車産業の景気は落ち込む。そこでハイブリッド、電気自動車へと流れが進むが、(略)ハイブリッドカーに限らずバッテリー寿命は3-5年とされている。バッテリー交換時が新車買い替え時にともなる」


ブライアン・キースは、このように具体的に例をあげ、「経済対策としては合理的にみえるが、環境対策としては逆行している」と指摘する。私も同様の感を、すべての「エコ商法」に感じている。
なぜ買い替えに「エコポイント」がつき、それを政府が奨励するのか?
そのポイントはどこからでるのか。なぜエコポイントの財源は問われないのだろうか?それは大手マスメディアが、商業的(コメルス)すぎるためである。
広告主の機嫌をそこねることはできない。

私たちの「ベターな行動」と思う行動の根拠には、「良いことをしょう」というごく真っ当な意思や意識が無意識に働いているのが、多くの人は、「損得」というほうにも目が向くので、アナウンス効果やメリットの背後にある、「ほんとうに良いのだろうか」という疑問にいきつくことがない。

教育、環境、社会保障などは・・・一人一人が、問いをもたなければ、いいように操られてしまう。歴史は過去の遺物ではない。現在を比較して認識するための指標なのである。

ブライアン・キース氏の Ecological revolution(コラム)「芸術センター 2009 9月号 VOL.42」(P.1 ART CENTER 2009)に掲載されている。ぜひ全文を読んでいただきたい。

美術に関して、レオナルド賛美と絵画市場の現代、ミケランジェロ・ブォナローティ軽視の理由も興味深く的確な指摘がされたコラムで印象に残っている。