「・・・人は、ルネサンス古典主義の神髄を体験したければ、フィレンツェでは、二つの噴水広場、サン・ロレンツォ聖堂、そしてサン・スピリト聖堂に行けばいい。そこではいささかも飾り気のない廉直で平明な時代の精神が体験できる」(『フィレンツェ 世界の都市の物語』若桑みどり 文藝春秋 (1999) P.196)

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 ブルネレスキの建築には彼の、そしてルネサンス(リナシメント)の精神が息づいている。その空間に入り、そしてドームの下に立つときに、明解で、明晰で、その空間にいる人の精神を開放しよう、開かれたものにさせる力が、そこにはある。それはブルネレスキの建築のもつ、比類ないパワーのように私は思う。
何百年ものちに、それは見るもの、眺めるもの、そこに佇むもの、つまりその場にいる誰もに、彼の精神と思想は語りかけてくる。それはまったく、不思議な体験であり、写真や映像では再現できない、認識の体験そのものである。


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サンタ・トリニタ橋を渡り、しばらくあるけば、サン・スピリト教会がある。
ファサードは、未完のまま。ブルネレスキへの敬意の表れである。
サン・ロレンツォ教会のファサードも、ミケランジェロへの敬意から、未完のままである。こうした精神と意味の継承が、フィレンツェに訪れると伝わってくる。

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彼の建築、もっとも有名なデル・フィオーレ聖堂のクーポラや、捨て子養育院、そしてサン・ロレンツォ聖堂やサン・スピリト教会・・・そこで感じられるものは、特別な空間である。ユマニテ、人間性、そして科学と合理主義、他者性へのまなざし、・・・フィレンツェを特別にしているものは、彼の建築におうところが多い、そしてその思想の根源に迫ること、読み解きたいという思いがある。

上の写真は、目抜き通りから裏側、付属美術館側からのデル・フィオーレ聖堂。

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サン・スピリト教会の前の広場。
教会の前には広場があり、人々が自由に過ごしたり、市がたったり・・開かれた空間。私は教会前の広場という空間が好きで、そこにいると、どの広場にも固有の時と場を感じることができる。

フィレンツェは、早朝、昼、夕方、と広場を抜けるのが愉しい。
誰もいない、早朝のレッブリカ広場、明るい朝の光がさすシンヨーリア広場、午後のサン・マルコ広場・・・ライトアップされたファサードと広場が美しいサンタ・マリア・ノヴェッラ。祝祭と犠牲の場は、現在もそこに残っている。


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