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バルジェッロ国立博物館は初期ルネサンス彫刻好き(つまり私のような人間)には宝物の詰まった場所である。 1階のギャラリーはガラス張りなので、通りからジャンボローニャやミケランジェロの作品も観られる。 しかしここで真っ先に目指すのはとにかく「ドナテッロの間」である。エントランスをぬけて中庭へ出ると、2階に向かう階段がある。 回廊のドアを開ければそこがドナテッロの間である。 正面には、「聖ゲオルギウス」が、そして「ダビデ(メルクリウス)」が、フィレンツェの象徴である盾をもつライオン「マルゾッコ」が佇む。 ここは、世界中からこれらの作品に会いにくる場所なのだ。 写真は2階の回廊。チケットを買い、中庭に出ると外の階段から2階のギャラリーへいくことができる。 ロレンツォ・ギベルティとフィリッポ・ブルネレスキの1401年のコンクラーベ時の「イサクの犠牲」もここに並べてある。 ギャラリー後方にはルカ・デッラ・ロッピアの作品が豊富であり、その脇には、ドナテッロの「踊るプットー」もある。とにかく....正直言って何時間いても飽きることがない。中庭へ出てまたギャラリーへ戻る。もちろん、若い少年時代のレオナルド・ダ・ヴィンチをモデルにしたというあのヴェロッキオの「ダビデ」(レオナルドは弟子だった)も観るのだが、やはりドナテッロの間に戻ってきてしまう。 配置はとても配慮されたもので、非の打ち所がない。天然光が差し込む天井の高い広間。 マルゾッコとゲオルギウスは正面からみると重なるようにできている。360度の視点から多様な造形と美と思想を表現する彫刻作品を観られる貴重な場である。 私たちと同じ開館前から並んでいた10代の女の子もドナテッロの間を探していた。そしてダビデとマルゾッコを模写していた。私もそうとう....長い時間この広間にいたが、彼女もずっと作品と対峙していた。 作品との対話ということばではこの広間については語りつくせない。 作品と彫刻家が「待っている・佇んでいる」場所である。 バルジェッロ国立博物館は4日間フィレンツェに滞在中、2回脚を運んだ。 1回目は、フィレンツェ・ペレトラ空港に到着した翌朝9:45に行った。サンタ・トリニタ広場をぬけ、まだ誰もいないカルツァイウォーリ通りを歩き、ドゥオーモのドームを見上げる。ブルネレスキの像の前でまたドームを見上げるとアルベルティの「絵画論」の序文(ブルネレスキあての手紙でもある)を思い出す。そしてドゥオーモの設計からブルネレスキ死後に完成するまでのエピソードを思い出す。 滞在中2回目にたずねたときは最終日の昼だった。サンタ・クローチェ教会から再びバルジェッロへ向かった。 バルジェッロ博物館では、ドナテッロに関する英語の文献を2冊、イタリア語の文献(おもにダビデについて)を1冊、バルジェッロ博物館の図録(英語版)を1冊購入。ブックショップの女性はいろいろと本について相談にのってくれた。ブックショップについても感想ほか書きたいことがあるのだが、それはまた改めて書きたいと思う。 1010695
滞在したトルナブォーニ沿いのテラスにて。 サン・ロレンツォ聖堂やアルベルティが設計したサンタ・マリア・ノヴェッラ教会も見える。 ※ 回廊や中庭は写真撮影可能だが、その他の場所、作品は撮影禁止。わからないときは係の人に尋ねてみるとよい。 バルジェッロはウフィツィなどと異なり、開館時間が午後二時までと短い。