東京新聞12月18日夕刊に掲載されたイタリア・ルネサンスのフレスコ画の研究と修復をされている宮下孝晴氏のインタビュー記事を読んだ。サンタ・クローチェ教会のフレスコ、「聖十字架物語」(アーニョロ・ガッディ)を修復されていて、南イタリアのフレスコ画がもつ危機などについても触れられていた。サンタ・クローチェ教会は、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会と並んで、また対照的なフィレンツェの教会である。広大な空間は、木製の天上部によって上部の重みを軽減された結果可能のなったもので、内部にはミケランジェロの墓、マキャベリ、ガリレオ・ガリレイなどの墓がある。またドナテッロの磔刑像があり、ブルネレスキの磔刑像があるサンタ・マリア・ノヴェッラ教会とその意味でも対照的な教会だと思う。

写真はサンタ・クローチェ教会のファサード(正面)です。アルノ川沿いを歩いていくと国立中央図書館がみえ、その角を曲がるとサンタ・クローチェ教会と広場にでます。
約5年かけた修復は来年4月に完成するとのことで、インタビューはとても読み応えのある記事だった。
宮下孝晴氏の「フレスコ画のルネサンス」は持っていて何度も読んだ本。フレスコ画について、ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂、ギルランダイオ、マザッチオ、リオナルド、ミケランジェロなどの図版と解説、フレスコ画法について描かれている。こうした内容を知ると顔料を漆喰に閉じ込めて色彩と形を描いたままに見せてくれるフレスコ画をよりよく観られる。
第二次世界大戦ではイタリアの美術はかなりの損害を受けた。
マンテーニャの作品なども爆撃によって粉砕され、現在も一つ一つの破片をあつめて修復していると聞くし、それ以前もたとえば、ウッチェロのサンタ・マリア・ノヴェッラ・緑の回廊のフレスコ画はオーストリア占領時は厩にされていたので損傷が激しく、長年修復されていて現在の再公開に至っている。
修復したものを建築物や広場から外して美術館や博物館として公開するか、もとのまま公開するかというのは難しい選択だろうと思う。誰でもアクセス可能な広場や教会に作品がおかれること自体に本当は意味があるのだが、それを理解しなかったり価値をみとめない人たちから万が一損害をうけたら、あとの時代に受け継ぐことができない。「みるべきものが多すぎて卒倒しそうになる」とスタンダールは言ったのは有名だが、美術や建築、歴史に興味なく「イタリア旅行」をする人も増えてしまった。
話がそれてしまったが、宮下孝晴氏の本はお薦めです。
それから今は絶版になっていますが(古本では購入できます)NHKのフィレンツェ・ルネサンスのシリーズ(ジョットからプロト・ルネサンスまで、初期ルネサンス(ブルネレスキ・ドナテッロ、マザッチオ、ナンニ・ディ・バンコ、ルカ・デッラ・ロッピア)、フラ・アンジェリコ、フィリッポ・リッピ、再生への讃歌(ボッティチェリ、フィリピーノ・リッピ、ギルランダイオ)、三巨匠(盛期ルネサンス)、マニエリスムの全6巻シリーズ)このシリーズは近年のムック式の雑駁で浅薄な解説がついた薄い美術シリーズとはまったく異なり、解説も図版も地図、年表も充実していてルネサンスが概観できます。

サンタ・クローチェ教会のほうへ歩いていくとこんな風景に代わってきます。都市のすぐ近くに明るい丘陵地帯の風景が開けてくるのがまた魅力です。
フレスコ画のルネサンス―壁画に読むフィレンツェの美
著者:宮下 孝晴
販売元:日本放送出版協会
発売日:2001-01
おすすめ度:
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再生への讃歌 ボッティチェリ・ギルランダイオ・フィリッピーノ・リッピ (NHKフィレンツェ・ルネサンス)
販売元:日本放送出版協会
発売日:1991-03
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美と人間の革新 ブルネレスキ、ドナテッロ、マザッチオ (NHK フィレンツェ・ルネサンス)
販売元:日本放送出版協会
発売日:1991-08
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三巨匠 レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエッロ (NHK フィレンツェ・ルネサンス)
販売元:日本放送出版協会
発売日:1991-04
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追記
ひとつ気になったのは、この記事にサンタ・クローチェ教会の外観や修復作業中の写真などが一枚も載せられていないということ。フレスコ画が教会にあるから新聞としては遠慮したのでしょうか?しかしそれでは、中世から近代における芸術・建築・自然科学すらもまともも知ることも読むことも取り上げることもできないのではないでしょうか。
写真はサンタ・クローチェ教会のファサード(正面)です。アルノ川沿いを歩いていくと国立中央図書館がみえ、その角を曲がるとサンタ・クローチェ教会と広場にでます。
約5年かけた修復は来年4月に完成するとのことで、インタビューはとても読み応えのある記事だった。
宮下孝晴氏の「フレスコ画のルネサンス」は持っていて何度も読んだ本。フレスコ画について、ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂、ギルランダイオ、マザッチオ、リオナルド、ミケランジェロなどの図版と解説、フレスコ画法について描かれている。こうした内容を知ると顔料を漆喰に閉じ込めて色彩と形を描いたままに見せてくれるフレスコ画をよりよく観られる。
第二次世界大戦ではイタリアの美術はかなりの損害を受けた。
マンテーニャの作品なども爆撃によって粉砕され、現在も一つ一つの破片をあつめて修復していると聞くし、それ以前もたとえば、ウッチェロのサンタ・マリア・ノヴェッラ・緑の回廊のフレスコ画はオーストリア占領時は厩にされていたので損傷が激しく、長年修復されていて現在の再公開に至っている。
修復したものを建築物や広場から外して美術館や博物館として公開するか、もとのまま公開するかというのは難しい選択だろうと思う。誰でもアクセス可能な広場や教会に作品がおかれること自体に本当は意味があるのだが、それを理解しなかったり価値をみとめない人たちから万が一損害をうけたら、あとの時代に受け継ぐことができない。「みるべきものが多すぎて卒倒しそうになる」とスタンダールは言ったのは有名だが、美術や建築、歴史に興味なく「イタリア旅行」をする人も増えてしまった。
話がそれてしまったが、宮下孝晴氏の本はお薦めです。
それから今は絶版になっていますが(古本では購入できます)NHKのフィレンツェ・ルネサンスのシリーズ(ジョットからプロト・ルネサンスまで、初期ルネサンス(ブルネレスキ・ドナテッロ、マザッチオ、ナンニ・ディ・バンコ、ルカ・デッラ・ロッピア)、フラ・アンジェリコ、フィリッポ・リッピ、再生への讃歌(ボッティチェリ、フィリピーノ・リッピ、ギルランダイオ)、三巨匠(盛期ルネサンス)、マニエリスムの全6巻シリーズ)このシリーズは近年のムック式の雑駁で浅薄な解説がついた薄い美術シリーズとはまったく異なり、解説も図版も地図、年表も充実していてルネサンスが概観できます。
サンタ・クローチェ教会のほうへ歩いていくとこんな風景に代わってきます。都市のすぐ近くに明るい丘陵地帯の風景が開けてくるのがまた魅力です。

著者:宮下 孝晴
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追記
ひとつ気になったのは、この記事にサンタ・クローチェ教会の外観や修復作業中の写真などが一枚も載せられていないということ。フレスコ画が教会にあるから新聞としては遠慮したのでしょうか?しかしそれでは、中世から近代における芸術・建築・自然科学すらもまともも知ることも読むことも取り上げることもできないのではないでしょうか。
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