以前から気になっていた、大學書林の『ドナテッロ/レオナルド・ダ・ヴィンチ』を先月購入した。ヴァザーリの芸術家列伝は有名だが(ミケランジェロの墓碑を制作し、ウフィッツィ美術館の設計をしたのもヴァザーリである。)このシリーズは新書版で、左側にイタリア語の原文、右側に日本語訳がのっており、教科書のように文法や単語についての註がついている。体裁にも惹かれたがやはりドナテッロについて書かれた原文を見たかったというのが一番の理由でもある。
フィリッポ・ブルネレスキとの交流の逸話も載っている。この逸話は象徴的な内容で、一つにはドナテッロに劣らずそれよりも勝るような表現でブルネレスキの彫刻家としての力量に言及していること、ギベルティとのコンクラーベ(コンクール)に負けたブルネレスキがその後二度と彫刻をつくらず、ある意味でブルネレスキの彫刻家としての可能性をドナテッロが引き継いだこと、そして、作品にあらわれている通り、ドナテッロが古代ローマ時代以降初めて(西洋美術において)360度の丸彫り彫刻を作り出したこと。
コジモとの関わりについてもとても興味深い。こうした話を真実かどうか信憑性があるかどうかだけで価値判断するのは、あまり面白いとはいえない。書かれたものは、書かれたものとしてその存在を示している。それを読むのは私たちに開かれている。
この時代を取り巻いている他者性、芸術とユマニスムの関わり、更には三重の生の意味についてすこしでも読み解きたいと思っている。
現代ではレオナルド・ダ・ヴィンチだけがルネサンスの万能の天才であったようにいわれるが、万能の天才という意味ではやはりアルベルティであろう。
アルベルティの絵画論の序論はいつ読み返してみても、味わいがある。訳者である三輪氏は日本語に彼の言葉を再生させたのだろう。キケローは、個人と個人の価値観による繋がりを重視して「友情について」を書いたが、個人の発見という点でアルベルティの序文にもそれは「再生」されている。マザッチオ、フィリッポ(ブルネレスキ)、ドナテッロらにむけて書かれた序文である。
リナシタ(伊)ルネサンス(仏)に対する「文芸復興」という日本語訳は相応しくないように思われる。芸術と数学がもっとも接近した時であり、ある意味では自然科学の再生である。それと同時に芸術と思想が最も接近したときでもある。再生という言葉自体が、「死を想え」と表裏一体である。
しかしそれが初期ー盛期ルネサンスのような造形を生んだのは、私にはもういくつか要因と起源があると思っている。

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