先週ようやくポンペイ展にやっと行くことができました。

ナポリは行ったことがなく、ポンペイのフレスコ画を観たいということでかなり期待していたが、ほぼ期待通り、と書くと僭越だが、遺跡や考古を観る際には、その事物を通じた時代やその時代に生きて死んでいった人に出会う気がする。実際、遺跡に脚を運ぶ際には、巡礼的な気持ちに包まれる。
フィレンツェ考古博物館からも来ていたし、大理石像群や胸像の迫力が圧巻。ソンマ・ヴェスヴィアーナのディオニュソス像が良かった...。
バッカス像はミケランジェロが彫るまでは、酔った中年男性で描かれる+創られることが多いというのは知っていたけれど、このデュオニュソスは身体の弛緩・緊張バランスもギリシアの螺旋構造を受け継いでいる。つまり、コントラポストで表現される人間観。肉体を通じて、表現させるべきは精神である、その主題が活き活きと現れている。ドナテッロのダビデ(メルクリウス)の原形のような両性具有美。
「ROME」でずっとオクタヴィアヌスを観ていたからどうしても家系図をみるたびにあの面子を思い出してしまうのだが(現実にはもう少しストア派っぽくあそこまで私情で動いていたとは思えないが、あれはアングロサクソン的な視点からみたローマであろう。つまり、エピキュリアンを「美食家」としてしか翻訳できない英語圏での徒捕らえ方だろう。)
やはりアウヴストゥスはいい。
古代ギリシア文明というのは、アウグストゥス時代のローマ、そして初期ルネサンス、それからアリストテレス翻訳を通じた8-10世紀アラビア語圏で再生されていったといってもよい。
そのアウグストゥス時代にいかにギリシア文明が取り入れられ、共和制ローマと造形面でもちがうのかといった説明も丁寧だった。
アレクサンダー以降は、アポロンの顔はアレクサンダーに固定されたと言われているけれども、すでにシンボルと化していようともアウグストゥスはいい。あくまでも彼自身は「第一の市民」といっていたのも、欺瞞ではない。
月桂樹、オリーブ、ばらが描かれたフレスコも、初期ルネサンスを思わせるような緩やかな遠近法も良い。
フィレンツェのいくつかの最後の晩餐の背景にはこのポンペイのような植物や鳥が描かれたものがいくつかある。
葡萄のガーラントがなんとも地中海圏を思わせる。
(ローマではレモン、オレンジなどが多く、ギリシアのガーラントはリンゴや常緑樹+儀式の動物の骨である)
ローマ、エジプト、オリエント、初期キリスト教を巡る文化史などをすこしでも知っていれば、「イシスの儀式」のフレスコ画がとても興味深く貴重なものだとわかるだろう。2000年前に描かれた様子がよくわかる。陰影も見事。このような陰影はほんとうに、ジョットまで待たねば再生してこないのだから。
モザイク画や考古系の展示はカルタゴ展のほうが実は見ごたえがあったのだが、ナポリらしく海のモチーフを沢山使った練り硝子と貝殻のモザイク噴水もよかった。
双頭の蛇の指輪が展示してあった。
「グノーシスと古代宇宙論」(ヘルメス文書・ポマンドレース)に双頭の蛇がなにを意味するか書いてある。古代世界と古典学に興味があったらお勧めしたい。
帝政ローマにおけるエジプト・アレクサンドリアのイメージもわかってくるのではないだろうか。(こうしたことを含めて、私も調べ中なのではありますが)
図録は本当に充実しています。
ローマ関係はもうある程度の書籍も図版もみたり所有してはいますれども今回のものはとても情報量も多く印刷もきれいでとてても貴重な資料です。
先日記事にしたように、帰りはMFによってお茶を頂きました。
のえるさんとオペラ座のすべての映画ほかかなり山積していたバレエ話ができてよかったです。
上野にはもうすこし、作品をみたあとに感想を論じられたり、いろいろ情報交換ができるような手軽かつ今みてきた美術館の余韻をのこせるような、カフェレストラン、ビストロなどが増えないものでしょうか。
舞台をみたあとも、美術;博物館をみたあともそう思います。
ポンペイ展の図録や解説にちゃんとイタリアの研究者が関わって作成されているので、トリノエジプト展で感じたようないいかげんさも感じられず、充実した展示だった。
それからいつのまにか常設展が拡張されていて、テンペラ画などが増えたのも嬉しい、というか今までは一体何だったのかと思うくらい広く展示物も増えていました。
地中海の記憶―先史時代と古代
著者:フェルナン・ブローデル
販売元:藤原書店
発売日:2008-01
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記憶の中の古代―ルネサンス美術にみられる古代の受容
著者:小佐野 重利
販売元:中央公論美術出版
発売日:1992-03
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古代ギリシア・ローマの哲学―ケンブリッジ・コンパニオン
著者:デイヴィッド セドレー
販売元:京都大学学術出版会
発売日:2009-07
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西美のブックショップでも売っていたが、この本の原著(英語)を所有。
大変内容に富んでいます。
古代ローマの建築家たち―場としての建築へ (建築巡礼)
著者:板屋 リョク
販売元:丸善
発売日:2001-08
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グノーシスと古代宇宙論
著者:柴田 有
販売元:勁草書房
発売日:1982-01-20
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古代ガラスの骨壷がヒスイ色をした大型のもので保存状態がよく美しい。
なんともいえない感慨をもつ。しばしば観想してしまう人も多いのではないか。
トラキア展でみたよりも細密さはおとるが装飾品も面白い。
またカルタゴ展でみたテラコッタのランプは写真が展示してあり、このポンペイ展では黄金のランプが展示してあった。どちらもデザインが洗練されている。
ルネサンスでの「死を想え」memento moriの起源にあたるようなローマでの生死観があらわれた言葉が図録にあり、とても興味深かった。
ナポリは行ったことがなく、ポンペイのフレスコ画を観たいということでかなり期待していたが、ほぼ期待通り、と書くと僭越だが、遺跡や考古を観る際には、その事物を通じた時代やその時代に生きて死んでいった人に出会う気がする。実際、遺跡に脚を運ぶ際には、巡礼的な気持ちに包まれる。
フィレンツェ考古博物館からも来ていたし、大理石像群や胸像の迫力が圧巻。ソンマ・ヴェスヴィアーナのディオニュソス像が良かった...。
バッカス像はミケランジェロが彫るまでは、酔った中年男性で描かれる+創られることが多いというのは知っていたけれど、このデュオニュソスは身体の弛緩・緊張バランスもギリシアの螺旋構造を受け継いでいる。つまり、コントラポストで表現される人間観。肉体を通じて、表現させるべきは精神である、その主題が活き活きと現れている。ドナテッロのダビデ(メルクリウス)の原形のような両性具有美。
「ROME」でずっとオクタヴィアヌスを観ていたからどうしても家系図をみるたびにあの面子を思い出してしまうのだが(現実にはもう少しストア派っぽくあそこまで私情で動いていたとは思えないが、あれはアングロサクソン的な視点からみたローマであろう。つまり、エピキュリアンを「美食家」としてしか翻訳できない英語圏での徒捕らえ方だろう。)
やはりアウヴストゥスはいい。
古代ギリシア文明というのは、アウグストゥス時代のローマ、そして初期ルネサンス、それからアリストテレス翻訳を通じた8-10世紀アラビア語圏で再生されていったといってもよい。
そのアウグストゥス時代にいかにギリシア文明が取り入れられ、共和制ローマと造形面でもちがうのかといった説明も丁寧だった。
アレクサンダー以降は、アポロンの顔はアレクサンダーに固定されたと言われているけれども、すでにシンボルと化していようともアウグストゥスはいい。あくまでも彼自身は「第一の市民」といっていたのも、欺瞞ではない。
月桂樹、オリーブ、ばらが描かれたフレスコも、初期ルネサンスを思わせるような緩やかな遠近法も良い。
フィレンツェのいくつかの最後の晩餐の背景にはこのポンペイのような植物や鳥が描かれたものがいくつかある。
葡萄のガーラントがなんとも地中海圏を思わせる。
(ローマではレモン、オレンジなどが多く、ギリシアのガーラントはリンゴや常緑樹+儀式の動物の骨である)
ローマ、エジプト、オリエント、初期キリスト教を巡る文化史などをすこしでも知っていれば、「イシスの儀式」のフレスコ画がとても興味深く貴重なものだとわかるだろう。2000年前に描かれた様子がよくわかる。陰影も見事。このような陰影はほんとうに、ジョットまで待たねば再生してこないのだから。
モザイク画や考古系の展示はカルタゴ展のほうが実は見ごたえがあったのだが、ナポリらしく海のモチーフを沢山使った練り硝子と貝殻のモザイク噴水もよかった。
双頭の蛇の指輪が展示してあった。
「グノーシスと古代宇宙論」(ヘルメス文書・ポマンドレース)に双頭の蛇がなにを意味するか書いてある。古代世界と古典学に興味があったらお勧めしたい。
帝政ローマにおけるエジプト・アレクサンドリアのイメージもわかってくるのではないだろうか。(こうしたことを含めて、私も調べ中なのではありますが)
図録は本当に充実しています。
ローマ関係はもうある程度の書籍も図版もみたり所有してはいますれども今回のものはとても情報量も多く印刷もきれいでとてても貴重な資料です。
先日記事にしたように、帰りはMFによってお茶を頂きました。
のえるさんとオペラ座のすべての映画ほかかなり山積していたバレエ話ができてよかったです。
上野にはもうすこし、作品をみたあとに感想を論じられたり、いろいろ情報交換ができるような手軽かつ今みてきた美術館の余韻をのこせるような、カフェレストラン、ビストロなどが増えないものでしょうか。
舞台をみたあとも、美術;博物館をみたあともそう思います。
ポンペイ展の図録や解説にちゃんとイタリアの研究者が関わって作成されているので、トリノエジプト展で感じたようないいかげんさも感じられず、充実した展示だった。
それからいつのまにか常設展が拡張されていて、テンペラ画などが増えたのも嬉しい、というか今までは一体何だったのかと思うくらい広く展示物も増えていました。

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西美のブックショップでも売っていたが、この本の原著(英語)を所有。
大変内容に富んでいます。

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古代ガラスの骨壷がヒスイ色をした大型のもので保存状態がよく美しい。
なんともいえない感慨をもつ。しばしば観想してしまう人も多いのではないか。
トラキア展でみたよりも細密さはおとるが装飾品も面白い。
またカルタゴ展でみたテラコッタのランプは写真が展示してあり、このポンペイ展では黄金のランプが展示してあった。どちらもデザインが洗練されている。
ルネサンスでの「死を想え」memento moriの起源にあたるようなローマでの生死観があらわれた言葉が図録にあり、とても興味深かった。
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