トリノ・エジプト展(都美術)へ、朝10時頃入場して11時半ちかくには既に入場制限していました。いつも思うのですが65歳以上の方は無料ではなく200円くらいでも負担していただいたらどうでしょうか、というのも、作品の前で世間話や知人家族への愚痴などまったく関係ない話をしながら観ている人が多すぎると思うのです...「タダなら入ってみよう」というというだけならどこかほかに相応しい場があるように思うのですが....少なくとも日本では、ほとんどは入場料を払ってみる展示や博物館ばかり・再入場不可、高校生からは料金を取るというシステムなのですから。
と、こんな事を展示内容よりも書いてしまうことになるのも、都美術という美術館が展示空間として狭すぎるからなのでしょう...特に大英博物館やエジプト関連の展示の際には、観る対象物との距離も十分にとれず、人が展示物に群がって身動きできなくなるために、じっくり観ることも・視ることでもできない印象のほうが多大です。
こういった大型の展示はやはり平成館が一番です。
都美術館での企画自体や展示内容が良いだけにとても残念です。

トリノ・エジプト展では、オシリス神の頭部像がよかった、思っていたよりも大きく、全体の存在感を創造させるものがあった。やはり写真ではまったくわかりません。
ツタンカーメンとアメンの立像は思っていたよりも小さく感じましたが、非常に完成度の高い彫像です。「石」に生命を吹き込む技術の高さを感じられるものです。解説としても、なぜツタンカーメンが名を消された王なのかが書かれていた点が良かった、というよりもこの点を理解しないとエジプト文明の重要性が理解できない。

そのほか、前半のセクションでは女神像が充実していました。ライオンと女神はオリエントからの流れを感じます。
アンクが、ラテン十字へと変容していき、ホルス、オシリス、イシスが初期カトリックの図像へと転じた経緯などいろいろな要素を感じたのですが、説明がどこか、日本の現世利益中心仏教とかさねあわせてしまっている部分があり、物足りないものがありました。
誕生から死、そして復活と永遠性、肉体と精神についてなど、葬儀の文化の多相性など古代エジプトは視ているだけでも面白く、その内実について「読みとく」ことによってさらに面白いものだと思います。

オシリス神話については、山形孝夫先生の「砂漠の修道院」を読まれることをお薦めします。また、ナイルが河ではなく、海・彼岸的なものとしてとられられていたという点や、葬送の文化についてみることは彼らの価値観を知る上でとても重要です。

期間中、もう一度行きたいですが、個人的にもしエジプトへいく機会が生涯訪れるとするならば、古代だけでなく中世カイロの歴史地区、マドラサ、アレクサンドリアなどに行きたいですね...エジプトは、古代だけではないのです。