デンマークロイヤル・バレエのナポリ、はシュトゥットガルドバレエの「オネーギン」に次いで昨年から観たかった演目だったので楽しみにしていました、タランテラの部分はごくたまに踊られることもありますが、本場ブルノンヴィルの伝統をもつデンマークのステップは素晴らしかったです。
「生の謳歌」と云われるこのバレエは通常2幕でバレエ・ブラン(白いバレエ)と云われるような、生死の境界や精神性、詩情を謳う「異界」「非日常」も、海底という「異世界」が舞台となります。海王はポセイドン、異世界の入り口は、青の洞窟。
キリスト教による異教(ギリシア・ローマ的世界観)という見方も入り込んでいますが、それも、第一幕から三幕までジェンナロと町の人を支えて見まもる修道士(フラは確か修道士の位階だったとおもいます、フラ・アンジェリコもそうですが(彼は天使のようなフラという意味で呼ばれていたはずです、ルネサンス期の画家たちは本名と違う通称で呼ばれますね..)の役割や存在によって決して一元的なものではなく、いいと思います。

1幕はマイムが中心、これをみていると北方のバレエは劇の要素が強いなと思ったのでした。そして、ドン・キとの共通点もちらほら。ドン・キでは母がいないキトリにたいして、ナポリではテレシーナは父のいない母が登場するあたりも、地母神・母系的考えが残っているイタリアを思わせる部分がありました。

2幕の16人の海の精の踊り・シーンは絵本の挿絵のようでした、こういう舞台はやはり北方のバレエ団ならではの雰囲気がでます、オペラ座のエレオノーラ・アバニャートもノルマン系を思わせるシチリア人ですが以外と南イタリアと北方は共通点があるのですよね。そしてテレシーナの2度にわたる衣装の早変わり。こういう仕掛けがあるのも、ラ・シルフィードとの共通点かもしれません。ラ・シルは宙のりするように、シルフィードたちが上空を飛び交ったりしますから、形式化されていく19世紀後半のバレエとはまたちがってとてもおもしろかったです。

そして3幕はすばらしかったですね、ナポリは南の文化風土とと舞台設定ですが、踊りや衣装の文化的根底はケルトがあって、ジグやリールなどの絶え間ない躍動感、アイリッシュダンスなどにも通じる舞踏が流れてる気がします。
ブルノンヴィルのステップは絶え間なく躍動して音楽と同調するスタイル、このステップの本質を守り、身体から音楽が生まれているように踊っていたダンサーたち、ソリストたちは素晴らしかったです。
この公演をもう一度みたいと思ってタランテラの後半には寂しくなってしまったほどでした。テレシーナ役のティナは正直少々太めで、しかしマイム演技が重視されるとなると彼女がタイトルロールなのかな、とも・・・ただ、上体の柔らかさはよかったです。デンマークの演目のメルヘンな雰囲気はあまり感じられませんでしたが、2幕のコール・ドの海の精や、3幕のパ・ド・シスなどでは十分に堪能できました。
ジェンナロ役は演技も踊りもよかったと思います。
デンマーク・ロイヤルバレエの子ども達はみな、アンカーの絵画にでてくるような子ども達で可愛らしかったです。

ぜひぜひ、このデンマークロイヤルバレエ「ナポリ」のDVDを再販売するか、新しい録画で観たいと願ってしまいます。音楽もとても素晴らしいですよね。
最近はゴーティエの時代のバレエをすごくみなおしています。
実はデンマークロイヤルの「ナポリ」と「ラ・シルフィード」だったら両公演観に行ったと思います。

午前中から午後はじめまで仕事もあったので、重い資料を持ちながら上野へ移動したりしていたためか、明け方から肋間神経痛が酷いです..
あまり無理できたものではありませんね...しばらくはまた忙しい日常かと思うと、「ナポリ」の舞台体験と時間がとても名残おしいです。(本当に)