http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009021490135821.html

朝倉彫塑館が休館になるとのことです。
木造部分の耐震性問題から鉄筋部分までしかちかごろは入れませんでしたが全館休館になるとのこと、4年間だそうです。

補修に8億円かかるそうですが、絶対残してもらいたいですね。
朝倉彫塑館は和風建築と庭園もすばらしいですが、モダン的意匠や朝倉文夫の思想も反映されている建築+庭園でこれをきちんと保存できないようならもともと脆弱な戦後日本の文化水準の低さを物語るエピソードになるでしょう。

歌舞伎座も絶えかえられますが、ますます江戸、東京とつながりがある部分が失われていきます。

ル・コルビジュの国立西洋美術館を世界遺産になどという運動よりももっと重要なことです。(私は舞台芸術やアート関連の趣味の友達にいつもこの国立西洋の「世界遺産化」について話題にしてしまいますが。五輪にむけて東京の顔模索中などという新聞記事もでていましたが、こう文化的な基盤がないままに東京に居住する人がふえてくると何が価値があるのか、わからなくなってしまうのだという危機感が募ります。)
私が思うのは、ただ半端に近代風現代風な都市である東京に訪れたいと思う人はいなくなるということです。
(首都圏と東京圏居住者がディズニーリゾートに訪れるのは、東京や首都圏には町並みの風景がないための裏返しの現象ということと同じように)


ところで、「音遊人」というヤマハの機関紙に「外から聴く日本(1)」というタイトルでブリティッシュ・カウンシルの駐日代表のジェイスン・ジェイムズ氏のコメントが2ページにわたって紹介されていたのを読みました。「日本文化の真髄は繊細さにあり」と語っていました。外のものを取り入れてたり新しいものを取り入れて発展することが「東京」を巡っては報じられることが多いですが、壊したら二度と過去につくられたものは造れないのだし、過去を見直すことで新しいインスピレーションが生まれることに繋がるのですから、やはり文化というのは保存が条件なのだと感じます。その国固有のものをどれだけ残せているか、継承発展しているかが文化度なのだと思うのですが....

朝倉彫塑館はアトリエも勿論よいのですけれど、建築と庭の一体感が素晴らしい。
そして庭には朝倉の思想がよく表されている。
かならず白い花がどの季節にも咲くように植えられていて、庭の大きな池は湧き水がたたえてられている。書斎の書棚、書、日本間とアトリエとみるところが多い。
洋蘭のためのサンルームには、猫たちの彫刻がならんでいる。
屋上庭園にはオリーブの木があり、そこから谷中の墓地や上野の山の森がみえる。
ここがいわゆる東京における”第一山の手”なのだと実感できる場所なのです。
朝倉彫塑館には多くの人がおとづれるが外国人の散策者も多い場所です。
館内で売られている、『自然と朝倉文夫』の小冊子がおすすめ。