ラファエル前派の画家、イブリン・ド・モーガンはバーン=ジョーンズと同時代人の女性。この画家が描いた『死の天使』。ミレイが中世テンペラ画の世界や質感、精神性に回帰しようとしたのに対して、モーガンはフィレンツェのフレスコ画に惹かれてその作風を取り入れている。
モーガンが描く天使は”死の天使”天使はメッセンジャーの役割をもつが、生も死も司る。生のメッセンジャーがたとえば「受胎告知」だとすればこの天使は草刈鎌をもつ天使。しかしその表情や絵全体の雰囲気は穏やかで優しい、慈悲の聖母のモチーフのようでさえある。。背景のトスカーナ風の糸杉(レオナルドの絵にもたびたびみられるような)やはり15世紀イタリアの絵画に描かれるような草花。細やかな表現と輪郭がスフマート(ぼかし)で描かれた調和性、この絵が19世紀末にかかれたとは思えないほどだ。印刷ではなく、実際に見られたらさらに発見できるように思える。
またラファエル前派の画家の作品が大規模にみられる機会があると良いと思う。
私がこの絵をみたのは図書館美術史関係の書庫にあった『Angels』〔ローラ・ウォード著〕という本で、オールカラーで絵が見られる上に、説明も細やか。「天使の起源」について、キリスト教はもちろんだが、セム系一神教(ユダヤ教、イスラム教、キリスト教)の起源としてのエジプト多神教にまで遡って歴史が書かれていて大変面白い。以前、聖母子像の起源は子を抱くイシスだと書いたが、この本でも触れられていたし、翼のあるものを聖視するのはホルス由来なのではないかと書かれていた。ヘルメス(メリクリウス)のサンダルに羽があるのもそのためである。東西や宗教は文化と歴史をたどるとそれほど乖離したものでもない。人と世界と繋ぐ役目あるいは、クッションのような役目をメッセンジャーとしての天使が負っていたのだろう。ユニコーンや天使は実在しないタイプにすぎないといえるかもしれないが、人がそれを生み出したのは「心性」のバランスとして必要があったからなのだと思えてくる。
クリスマスが近いからかそんなことを思ってしまった。
話がずれたが、イヴリン・ド・モーガンはサンドロ・ボッティチェリの作品に惹かれたのだという。「フローラ」ではやはりボッティチエリの「プリマヴェーラ」の花の女神「フローラ」を思わせる女性が描かれている。ボッテイチエリの作風は盛期ルネサンスでミケランジェロに受け継がれるが、19世紀にはモーガンが技術でも作風でもテーマとしても受け継いでいるのがわかる作品だと思う。私はモーガンの作品には、背景や人物の表情からレオナルドの<受胎告知>と共通するものを感じた。優れた作品に描かれるものが、次の作品を生み出すのだと思う。

天使の姿―絵画・彫刻で知る天使の物語
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モーガンが描く天使は”死の天使”天使はメッセンジャーの役割をもつが、生も死も司る。生のメッセンジャーがたとえば「受胎告知」だとすればこの天使は草刈鎌をもつ天使。しかしその表情や絵全体の雰囲気は穏やかで優しい、慈悲の聖母のモチーフのようでさえある。。背景のトスカーナ風の糸杉(レオナルドの絵にもたびたびみられるような)やはり15世紀イタリアの絵画に描かれるような草花。細やかな表現と輪郭がスフマート(ぼかし)で描かれた調和性、この絵が19世紀末にかかれたとは思えないほどだ。印刷ではなく、実際に見られたらさらに発見できるように思える。
またラファエル前派の画家の作品が大規模にみられる機会があると良いと思う。
私がこの絵をみたのは図書館美術史関係の書庫にあった『Angels』〔ローラ・ウォード著〕という本で、オールカラーで絵が見られる上に、説明も細やか。「天使の起源」について、キリスト教はもちろんだが、セム系一神教(ユダヤ教、イスラム教、キリスト教)の起源としてのエジプト多神教にまで遡って歴史が書かれていて大変面白い。以前、聖母子像の起源は子を抱くイシスだと書いたが、この本でも触れられていたし、翼のあるものを聖視するのはホルス由来なのではないかと書かれていた。ヘルメス(メリクリウス)のサンダルに羽があるのもそのためである。東西や宗教は文化と歴史をたどるとそれほど乖離したものでもない。人と世界と繋ぐ役目あるいは、クッションのような役目をメッセンジャーとしての天使が負っていたのだろう。ユニコーンや天使は実在しないタイプにすぎないといえるかもしれないが、人がそれを生み出したのは「心性」のバランスとして必要があったからなのだと思えてくる。
クリスマスが近いからかそんなことを思ってしまった。
話がずれたが、イヴリン・ド・モーガンはサンドロ・ボッティチェリの作品に惹かれたのだという。「フローラ」ではやはりボッティチエリの「プリマヴェーラ」の花の女神「フローラ」を思わせる女性が描かれている。ボッテイチエリの作風は盛期ルネサンスでミケランジェロに受け継がれるが、19世紀にはモーガンが技術でも作風でもテーマとしても受け継いでいるのがわかる作品だと思う。私はモーガンの作品には、背景や人物の表情からレオナルドの<受胎告知>と共通するものを感じた。優れた作品に描かれるものが、次の作品を生み出すのだと思う。

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