2007東京大学公開講座

<力> 10/20(土)

・近代日本と軍事力 歴史に学ぶ 加藤陽子
・マーケティングできない日本  
・戦後日本におけるアメリカニズムと権力 吉見俊哉
・見えにくい権力            原田志郎
・国際政治における権威・権力・暴力   藤原帰一




・近代日本と軍事力 歴史に学ぶ 加藤陽子

日清・日露・太平洋戦争・・・この間10年しかなく、
人々が前の記憶を残したまま戦争がおきている

吉野作造 開戦の論理を押した 福沢諭吉も。

イギリスでは貴族・上院の師弟が多く志願兵として参戦し16%戦死
一般は9%位。血の犠牲に関わりながら戦争していたが
日本は、満州事変時の死者はほとんど貧者。(大工・八百屋・石屋など)
大学生・大学も特権意識をもっており、自らは守られていると思っていた認識がある。

当時の軍部は現在の兵力ならば勝機はあるからという理由で、開戦を急ぐ。
日露戦争がかろうじて勝ったということを認識していたが、その認識がずれていた。
アメリカにも勝てないだろうと思っていたが、今なら勝てると思い開戦を急いだ経緯がある。

そして、ロシアの補給を立つべきだと考え、満州事変を起こす。

「聞けわだつみのこえ」

京大生の経済学部の学生 本の余白に遺書を書く。
「こうして自分は気晴らしのために死んでいく。日本がおかした非道を思い起こせばそのあたりまえなのだ」・・・・。

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・戦後日本におけるアメリカニズムと権力 吉見俊哉(情報学環)


日本人を親米にさせている力とは何か?

日本はイラク戦争前後も、また60年安保の時も(47%)現在も77%程度の人がアメリカをすきと云っている。

なぜこれほど親米なのか?よく云われている3つの事。

1.「ハリウッドや大衆文化があるから」・・・日本だけではない
2.「戦後復興できたのはアメリカのおかげ」・・・今でもおかげと思ってる人はいるか
3.「骨抜きにされたのだ」・・・軍事力が影響してるのは日本だけではない

他者としての日本人のアメリカがアイデンティティ(心地よいと思う)を可能にしたのでは?

まなざし・影響力・暴力の複合力

1.暴力としてのアメリカ:AがBを力づくで従わせる 軍事
2.影響力としてのアメリカ:AがBに利益を与えつつ従わせる 経済・政治
3.まなざしとしてのアメリカ:Bが自覚なしに自ら望んでAの視点に沿って行動

→3は無意識に行っている。


<他者としてのアメリカへのまなざし>

近代日本における日本

)詼 「自由の国」福沢・内村・有島・・・内面的なアメリカ

大正・昭和のモダニズム ・・・消費文化としてのアメリカ

安藤更生 「銀座」フランス風からアメリカ風へ
大宅壮一 東京=西欧 大阪=アメリカ

天皇制ナショナリズムの盛衰と反比例する傾向

仝威としての国レベルのアメリカ
都市レベル
2板蹈譽戰


マッカーサーの写真(サングラス・コーパイプ)を今我々はすぐに思い起こすが、実は当時の翌日の新聞には載っていない・・・ではいつそうなったのか?

占領時は検閲があるので、「占領者アメリカ」のイメージは後景となっており全面には出ていない。・・・占領意識に影響

これと同時に「人間天皇」が全面にメディアに出てくる。
天皇の地方巡幸。(1946−50) トピック:偽天皇の問題

「米軍」の消去 だが「占領」のメタファーとして女性のイメージとしてあらわれる

ミッチー 成婚 「新しい家庭」のイメージ

「アメリカと天皇制の表象上の結婚」・・

都市レベルでは、日比谷線沿線上に多い、海へ向かうライン

六本木・日比谷・麻布・白金台・田園調布などなど 
元々米軍の拠点であった
ではその前は?

六本木 日本軍・陸軍の街。占領→米軍の街 それ向けの店ができる
撤退後は忘却されファッションの街になる。

原宿表参道 練兵場がありそれがワシントンハイツに。占領後オリンピックのときに返還。若者とファッションの街に。

湘南も基地で演習をしていた。

これは1950年以降はアメリカが日本本土はアジアの経済センターとして脱軍備するから。その代わり沖縄はアジアと共産圏の防波堤とされる。(軍備)

天皇のナショナリズムから技術・経済のナショナリズムという意識
ex) 三種の神器 家電でも同じ言い方・・・

家電のイメージ広告がモダンガールから家庭の主婦になった。

アメリカから褒められる技術をもつ日本というアイデンティティ。

男・技術者としてのアイデンティティ
女・その製品を使うおくさま



・国際政治における権威・権力・暴力   藤原帰一
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デモクラシーにおいては他国からみれば「こわいもの」でも内側の国民からは抑制可能と認識されているので内外にズレが起きている

アメリカを他の国は驚異と感じるが、自国ではその意識は薄い。


・国際社会は無政府状態である。
・国際社会での力

‖捷颪鬚呂个猯
他国を滅ぼす力
B捷颪鯑阿す力
ぢ捷颪鬚劼よせる力


々餾歙治における戦争

抑止>> 「いざとなったら反撃する」という安定

阻む力と我々が思っていても、相手はそうは思わない。
相手は専守防衛といっていても攻撃的とみなすのが現実。

<安全保障のジレンマ>

日中/ セキュリティジレンマが起きている

中国は軍事を増やしていると日本は思っているが
中国の主観的にはむしろ極めて防衛的であると思っている
→ソ連崩壊後は特にそうである。

互いに防衛的と思うと、そこに悪循環が生まれる

そして<本当にはばむ力><抑止>はあるのか?

〕淹澆箸靴討領呂蓮∩蠎蠅そう受け止めなければ成り立たない。
⊂,討覆いもしれないと時の権力が思うと戦争に突入する
 ドイツーイギリス間の戦争時 「他に手が尽きた・・・」
 1914年 勝ち目のない戦争へ・・・

相手がどう受け取るかで成立するものは、それ自体が悪循環である。
この<抑止>を各国周辺で持つと、更に不安定になる。


¬任椶肯

リアルな問題として相手を殺す戦争はコストが高い
西欧の近代では相手を殺さずに 講和条件や賠償など

だが民族間・ほこりを元にした戦争は血と土を売り渡せないという心理
一度争いが起こると記憶されるために、相手が滅びないかぎり安定はないという心理になる (ウガンダ・ルワンダ・コンゴ)

阻む力を持ちながら滅ぼす力にならないためには?

B捷颪鯑阿す力

共通しているものを探す
おどす一方では外交はなりたたない

ex)18世紀ヨーロッパは教皇などの反対を押し切ってまで戦争しようとする王はいなかった。(国連もそういうものではという例え?)



ぢ捷颪鬚劼よせる力

森・小泉・安倍の時に日本がまったく外交的に空白の中で
中国は多数派工作にめざめ、東南アジアなどアジアと協力
これは80年代に日本がやったこととまったく同じ。
ぜんぶもっていかれた。とりかえすのは困難である・・・

暴力で相手を引き寄せる力はない。


(2007.11.20)安田講堂 東京大学・本郷)

今回の公開講座も数ヶ月後にはWEB上にUPされるようです。