朝日カルチャー新宿教室での「新・ギリシア哲学史(10)に出席してきました。(10月17日)

講師は納富信留先生。今回からいよいよ...のパルメニデス。継続講座ですが初めて参加された方も多かったのかもしれません。パルメニデスとゼノン、エレア派は古典系、フィロソフィア学徒以外も増える機会が多いからかもしれません。

他方、納富先生の授業冒頭いわく、「タレスやヘラクレイトスなどと比べて認知度が日本では低いよね。あれは多分教科書に載ってないという単純な理由なかもしれない」
確かに、かのルチャーも高校の哲学の授業(イタリアはいわゆる文系ではない理系が進学する高校での必修が哲学だから、彼の物語哲学史(読み物としてDLとあわせて普通に読書されるとよいと思う、ルチャーも疑問を隠さず書いているから彼も哲学が好きな元IBMマネージャーなのだ、で休暇に書いた本がベストセラーになった、と)--だから、誰もが哲学史の授業といえば「タレス=水の人」(単語帳みたいな、あるいは山川一問一答みたいなイタリア版試験対策でも)と書いていたという想いで話がから入っている。

そういえばと思い私の時は高校1年が倫理政経、2年世界史、3年日本史だった。
家に叔父のカントや父親のニーチェなどがあったり母親の蔵書もあったから、それこそいまでいう中2病丸出しで中1の頃から吹奏楽部の人を誘って学校図書室でバイロンとかオスカー・ワイルドとか読み始めるわけである。当然高1倫理社会の時は、タレス、アナクシマンドロス(4元素とかイオニア自然学迄)などはやり、そのあとソクラテス、プラトン、アリストテレスが紹介されていて、記憶があいまいになってきたが、アウグスティヌス、トマス、スピノザ、ヘーゲル、カントあたりまで、東洋としては老荘思想などが紹介されていて(当然試験もあった)
割と授業のことも覚えている。
納富先生が、今はどうなってるかわからないけどと話されていたので、今後仕事方面で今の倫社の教科書も比較してみようと思う。(私の本業の一つでもあるので)家に帰りその話をしたところ、家人の兄の倫社を読んだときはサルトルしか書いてなかった、らしい(・・・) ともかく、私がパルメニデスを知ったのは対話篇「プラトン」であるし、DL、あとはルチャーのいつもの物語哲学史の気らいでありフィロソフィア学徒としても絶対に出なくてはいけない講座だったので出席しました。

重要なことを書きこ遺しておきたいと思う。
今回の朝日カルチャー新宿では、パルメニデス著作 断片 の全訳を納富先生がされてその全文といまの段階の註が入ったものです。

板書と適度に図解(序歌から道の比喩あたり)もしていただいて、とても良かったし私はわかり易かった。
それから断片についてもその概要が解った。

まだ講座をうけてから訳をみていろいろ皆さん参加されたときはふと考えてみたりする段階だろうし、私もそうであり、最終的には書籍となる予定なので、井上解釈をとりながらの3命令法?であるとか、「ある」「ない」の示され方など、私は今回の訳はとても解りやすい、と感じている。

納富先生いわく井上先生訳は、ヘクサメトロス六脚韻 を再現すべく五七調、七五調というよう韻文詩の形式を日本語訳にも用いたとのことだが、今回は意味や解釈という点からそれはしていないということ。

私はこのblogには決して書かないのだが割と詩を書いていた時期があり(・・・)韻文形式でかかれたものを読むのは苦手ではない。
あとこれは、納富先生が実は形をとどめないもの(精神表現がかかわり、形をとどめない詩的芸術、バレエとか)について説明される文がとてもわかりやすいのだ。(と論文指導前から読んでいた本で思った)資料にのっとった緻密な作業から明瞭なことがらを書かれて、その上でどの文脈で何が考えられたのか議論されたのかということがもちろん先生の著作ではおそらく初読者のかたも読みやすいと感じると思うしそういう研究を重ねているとは思うのだけども、すごくいい訳でわかりやすい...ということです。
(時間がなくてまだ先生には伝えてませんが、次回の時には質問したいこともあるので書いておこうと思うし、ちくまや岩波の本しか読まれてない方には、精神史の〜のをお薦めしたいので書いておくことにする)

ピタゴラス派とのかかわりについては、次回質問をできたら少しさせていただきたいが、
思ったことは、エレアの有力者あるいは政治家であったかもしれないパルメニデスは、法を人(死すべき人でありすべてをしることはできない人知)がつくるときの有 ない の二つの道と、人間がそれを模倣したときに欠陥が乗じたり、問題を混同して判断をあやまることなどの、間違いかたを、少なくとも構造的に知ることができるだろうと呈示したのかもしれない、と個人的に感じた。

講座の冒頭でエレア派とパルメニデスの青年や人物を資料や分析からたどるという話にもかかわることだが、
パルメニデスは、エレアでは善政で役人に法を守るように宣誓させたそうである。

(現代のわが国でもそうあるべきである・・・。)


その後、エレアは僭主の危機になりゼノンの逸話にもつながると思われる。
とにかく出席できて良かったと思うので、いただいたレジュメの訳やとったノート(図とか)も少し整理したいところです。
3年くらい前からパルメニデスを訳されると聞いていたし、「哲学者の誕生」文庫化のときにもお話はきいていたので、これが全文の全訳、という感慨。以前の講座でも何度かこの話題「パルメニデス」のことを質問したことがあった記憶があり、先生としては「ない」というほうをもう少し考えたいと言っていた記憶があり、それで「ソフィスト」という対話篇で論文を書かれたのか...とか色々思うことはあるのですがとにかく、覚書として。

冒頭3行の六脚韻文詩もギリシア語で読み上げて貰いました。

ホメロス的伝統で書かれたならば、散逸した第二部は一体何が書いてあったのだろうか、という疑問も考えているうちに思い浮かんできた。・・・











精神史における言語の創造力と多様性
納富 信留
慶應義塾大学言語文化研究所
2008-04-01




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