10/12(金) 12:27配信

読売新聞

 東京医科大(東京)が医学部医学科の一般入試で女子受験生らの合格者数を抑制していた問題を受け、文部科学省が全国81大学を対象に行っている調査で、順天堂大(同)や別の関東地方の大学など複数の私立大学でも不正な入試が行われていた疑いのあることが関係者の話でわかった。性別や浪人の回数などを理由に合否判定で不利な扱いをしていたとみられる。

 柴山文科相は閣議後の記者会見で、複数大学で不正の疑いがあることを明らかにし、「合理的な理由がなく、差異を設けていることが客観的に見て取れる。どういう背景に基づくものなのか、大学は自主的に公表してほしい」と述べた。具体的な大学名は公表しなかった。

 東京医科大の問題を受け、同省は8月以降、医学部医学科をもつ全国81大学を対象に緊急調査を実施。9月に公表した調査結果では、過去6年間の入試で男女の平均合格率を比較したところ、約8割の63校で男子が女子より高かった。一方、東京医科大を除く全校が不正を否定していた。


https://www.yomiuri.co.jp/national/20181012-OYT1T50146.html
不正入試、昭和大なども…8割で男子合格率高く
2018年10月13日 07時21分

 東京医科大(東京)が医学部医学科の一般入試で女子受験生らの合格者数を抑制していた問題で、複数の私立大学にも不正入試の疑いがあることが、文部科学省の調査でわかった。女子や浪人を重ねた受験生を不利に扱っていたとみられ、関係者によると、順天堂大(同)や昭和大(同)などが含まれているという。

        

 同省は、東京医科大の問題を受け、8月以降、全国81大学の医学部医学科を対象に緊急調査を実施。過去6年間に行われた入試の男女別平均合格率で、約8割の63校で男子が女子より高いことが判明した。

 不正入試については、東京医科大を除く全校が否定したが、同省は、女子の合格率の低い大学を中心に約30大学を訪問し、詳細な聞き取り調査を実施。一部の私大が、性別や年齢で受験生の取り扱いに差をつけたり、特定の受験生を有利に扱ったりしていたことを申告し、それをうかがわせる資料も見つかったという。



読売からリンク元と記事を引用。


この問題が発覚(というよりも読売新聞のスクープ)となりさまざまな意見や議論があったのだが、女子学生と差別していた、男子学生を優遇していたあるいは受験回数によって点数加算などがあったという不正は大きく報じられた。女子が不当に(合格していたにもかかわらず、枠から意図的に外されて不合格としていた)学ぶ権利も断たれている(同時に、今までの努力をしたことも無駄にされている。)このこと自体が辟易とするのだが、最後に書くことにする。問題は、医学部に留まらなくなる可能性があるからだ。


以前、エスポジトの文でも覚書を書いた覚えがあるが、再度。この問題は、いわゆるカテゴリーとなる「生来自由人」ingenui、生まれながらにして自由である者と、被解法自由人 liberti がある。

「奴隷、servi、所有している息子 flii in postestate、婚姻関係にある妻 uxores in martimontino、手中にある女性 mulieres in manu、奴隷に準ずる状態にある自由人 liberi in mancipio (以下続く)・・このようなカテゴリーはすべて(他人の権利に服している)他権者 alienti inuris としての人間存在--換言すれば、彼らを法-権利の主体ではなく、客体にしてしまう。」(P.122-23)「ロベルト・エスポジト 生の政治と非人称の哲学」

私たちは、生来自由人である、と普段思っている(あるいは錯覚している)それも現憲法が出来てからの70数年でのことだ。生まれながらに自由であるものとは、常に権利の側で従属することがない、逆にいうと従属するもので階層化されている(今も残っているがそれがないことになっている。それを改憲によってすべてを従属者のカテゴリーにおこうとしているのが、今回提出されようとしている改憲案である)

やや論点先取りしてしまったため、もうすこし具体的にみてみよう。
そもそもが文科省職員が東京医大側に入試での便宜を図った(息子を医大への入学のために)というニュースからしてみて、父親が「所有する息子」に対して客体としていることがわかる。なんとなく、「エリート同士、上級同士は裏口入学もあってずるいね、とか、逆にどこもやっているというような論調もあり、無論、癒着による口利きなどは赦されない。だが私が指摘したいのは、この息子もまた、医者になる、医大へ進学する(したい)という所有された息子から、試験を経て、被自由人になっていく段階で、父親が「所有している息子のまま」結果があればよいと思われている点だ。
(そしてもし主体から受験をしていた男女とわず受験生は合格者という枠から外されている)

(いま動かしていないが、最初の不正発覚8月の段階で、私はこの問題は、女性差別という問題の他にも家父長制、長男主義(跡取り主義)の問題があるといってきた)

しかも女子の点数、受験回数(年齢)などの操作は募集要項には書いていないのだから詐欺にあたるとして、弁護されている方のグループも立ち上がっていて、有耶無耶になってはいけないし、この問題は継続して語られなくてはならない、被害にあった方はまさに、医師になるための学びを志して(努力したはずだ・・・)いた「主体者」なのである。しかし、現に密室で人の生き方のための試験の結果に手を加えている”支配”によって「客体化」されてしまったのだ。

どこでもやっている、とか女子大は差別ではないのかという意見に関しては、女子教育が戦前までは正式になく、女子大学を学制で認めていなかったのだ。私は三田評論において、終戦後、やっと大学で勉強ができる、学べるのだ!と慶應に入学して卒業された方の塾員のかたの体験記を読んだことを鮮明に覚えている。

安易に女子大が差別、女子高は差別というような方は教育史を学ぶ・・・のも面倒と思っていそうだから、タイムマシンでもできたら行って見てくればよいと思う。これは女子高の歴史もある意味で似ており、私立の女子中高は関東大震災時の被災時に、家を失った女子は生きていくすべが他人を頼るしかない、そのために自立できる教育をということが多いはずだ。(このことに関連して、女に教育は不要少子化は女のせい、のような論調も論理が飛躍している。女性が仕事を持つー養われるための結婚率は下がる−その賃金が充分でないから少子化になる、が正しい。女性のほうが香港などは給料がよい。余談・そもそも少子化少子化といっている人ほど、他人の子どもがかわいいということではなくて、インフラや社会が立ち行かなくなる、と自分ファースト公的サービスがうけられないから、という時点で・・・)


女子学生差別、男子学生差別という論点のみでのTwitterでの応酬では限界があり、メモとして残しておこうと思っていたのだが、さらにこのニュースが来たのでまとめている。

「私たちは問題なく医師をやっているし、そういう問題に直面したことはない」という女性医師を紹介することで、幕引きを図っていたニュースも8月中頃にはみられたが、それはそうだろう。
この時点で、もう彼女らは客体ではなく、主体者になっており、おそらく病院経営などを次いでいる。
つまり自権者であり、家長(Paster Famillias)の側にたっているのだ。


問題点:
この女子学生入試での不当な扱いに対して、全国の小・中・高の教師や校長は批判を出すべきである。
学校教育は、何かになるため、今よりよくなるため、知育、体育、自由学芸に属するもの、科学、カリキュラムとして行っているはずであり、これらの学校行程を経て、職業選択や将来につながる入試でもし問題ないと感じるのであれば、それは彼らがやっている「教育」がじつは生徒学生のための教育ではなく「学ぶものを主体と考えず、教える側を主体、すなわち学校の主役は学校で教員たちである」ということになる。

文科省を頂点とするヒエラルキーがこの問題にあって発言できないのかどうか、それも公立だからできないのか、私立だから忖度があるからできないのか、そのあたりは運営者、校長、学校経営者の立場から聞いてみなくてはわからない。今のところ、大学進学の前に教育を担ってきた教師や教員からはこれに対してあまり意見をみたことがない。大学の教員たちも忘れているが、いや高校の教員たちも忘れているが、15歳の生徒、18歳の学生・・・ここまで何人の教師たちがかかわって(親の養育は当然としても)その人、その主体である人になったか想像してほしい。・・・学校だけではない、もはや学校のカリキュラムでは絵画、芸術、バレエ、舞踏、音楽(器楽、ヴァイオリン、ピアノ諸々)多くの指導者が教えてくれたものもたくさん持っている。
一面的なところしかみない学校は、進学するたびに学生や生徒のモチベーションが下がってしまうということも発生する。大学生だからもう成長することはない、という意識があるのだとすれば可能性を切り捨てられているし、
逆に、そう思うからこそ能力主義ではなく、不正までして、不正入学を助長しているという点もあるかもしれない。

少子化少子化というために、改憲がなされ今まだなにも決定権がなく日々成長している1歳、2歳、3歳児たちが自民改憲案によって、自由に進学できない、自由に職業選択のための学びができない、性別により学ぶ内容が制限されるそういったことを、そんなことなら支持しなかったと言ってもおそいのだ。
あるいは、給与取得者や公務員で子どもを勉強で自己実現してほしいと思っていたのに、そのための枠が門地や性別、親の職業など(もっとえげつないからもしれない)無理になったということも起きうる。
現に日本には世襲のほうが多く、これを問題だとも考えないためにすこしずつ意識を戦中下させているようにすら感じる。

もっとも憂慮するのは、長男主義や家父長制が強いところでは、女子が生まれた時点でなんらかの差別をうけていくことだ。(今だって、もし3人兄弟で長男が1人(長子は女子)の場合は、教育費は成績がよくなくても家庭内で優遇されていることは珍しくない。)野放しにすれば女子教育は必要ない、ということを真に受ける父親(父親になるための免許はないのだ・・・)もでてきそうなことだ。非常に懸念する。

女子に教育は必要ないというのは、想像力が足りず、今の現状のままで養育や家政、あるいは子どもの学習をみたり、地域や学校教員と連携することが可能だと思い込んでいる。
改憲すればよくなる、というのも同じ幻想で、彼らこそはいまの憲法のもとに地位を築いてきたことであり、そうでないなら、更に改憲する前の利権を存分にしっている層が強行したいのだろう。






他権者; ある一つの支配力に対して、さまざまかたちで従属している人間存在--の階層を成しており、それぞれの社会的身分によって厳密に定義されている。このために彼らは、「唯一」の自権者である「家長」によって、時と場合に応じて、合法的に殺されたり、売買されたり、使用されたり、開放されたりする危険に曝されている。
(「」 は原文では傍点) P.123 ヒト・ペルソナ・モノ

この入試不正問題でも、自権者によって「時と場合に応じて(例:女子のほうが点数で多くなってしまうから)」排除されたのだ。今の憲法があるために、合法ではなく違法なので読売新聞はリークして記事にしている。
くれぐれも、今の憲法がなくなれば合法的になって問題ないじゃないかというようなスピンのような暴論はジョークにもならない。

今の憲法がある今ですら、上の論法を鑑みれば、開放(解雇)、殺されたり(事故や自殺かもしれない)、買収、契約を超えての使用(長時間残業など)、行われていてこれについて「あたりまえ」と思ってほしいというのと同義なのだ。まだ皮膚感覚的に遠いかもしれないし、最初は建前上ソフトランディング(ちょうど、張りぼてだったクールジャパンと同じで)を目指すかもしれない。

まだこの問題には指摘することがあるのだが、それは違う機会に書くかもしれない。









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