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原作 ジョナサン・スフィフト 
作・演出 寺山修司
演出・音楽 J.A.シーザー 
美術 機械工作 衣装 メイク ◎小竹信節
校正台本 共同演出 高田恵篤

万有引力"奴婢訓"公演に行って来ました。FBの記録を見たところ2012年2月15日に世田谷パブリックシアター・シアタートラムにて写真家の恭さんと一緒に見入っていました。さらにTwitterで関係者の方のログをみたところどうやらその日に旺なつきさんのアフタートークがあったらしく、よく覚えています。
万有引力公演は10代のころから観ている演劇なので、昨年の泉鏡花 夜叉ヶ池 につづき、今回の公演をずっと愉しみにしていました。2月14日千秋楽の観劇。

万有引力公演は開場したところからすでに舞台空間で上演は始まっている。そのため、開場、幕開きがありそこから演劇が始まるという通常の演劇概念では作られていない。その点はおそらく、ブレヒトなどが始めた演劇理論からはじまっていると思われるのだが、今回はブラジル公演(ユバ11月12日 13日 サントス 11月21日 22日 サンパウロ公演 11月28日 29日)の公演を経ての凱旋公演である。2012年に観ているとはいえ、改めて「今なぜ奴婢訓なのか」というテーマとブラジル公演版の日本上演という意味をたしかに感じることができた。

最後の言葉から還元的に考えてみよう。

主人が不在であることが悲劇(不幸)ではなく
主人をもとめることこそが悲劇(不幸)

・・・・正に今日的であるとは思わないだろうか。
寺山修二のテーマは、おそらくパラドクスなのだ。
奴婢訓のテーマは人間の自由とは何か、である。
それを表現するにあたり、否定神学的に、舞台上では、「顔の見えない、観たことがない、"主人"のかわりにサーバントたちは「主人ごっこ」を順番に行う。そしてその中で、人のエピソードや人の偏執であるとか本性であるとかが語られて表現されるのだ。

言葉、肉体、身体、歌唱、音楽、照明、舞台装置、舞台美術、舞台と客席の境界。
それらが犇めき、はじまりの時間ととも通常の時間は渦中にのまれていく。
圧倒的な表現に尽きる。
獣性により、人間性が浮き彫りになる。だから途中で適度にはさまる「笑い」はそれによって人間世界のブリッジとなる。

そういったことも余計なことに感じられるほど、演者俳優陣の圧倒的な存在感、そして多様性は素晴らしい。
寺山修二の言葉や書かれた戯曲は、このカンパニー(天井桟敷のメンバーが存続して伝えてくれている唯一のカンパニーである)だからこそ、生命をもって今日の、2015年、2016年になっても古くなることはなく生きて呼吸し我々に語り掛け日常に対する正統なテーゼを提示する。

少し日常的すぎる話題を例として出すならば、労働という行為に、正規であるとか非正規であるとか名づけ差異化したつもりでそこに興じるのはまさに奴婢訓で描かれる事柄なのだ。奴婢訓で演じられるのは「主人ごっこ」であり、彼らは自らがそれが遊びであると自覚している。だが今日はどうか。わかってやっているならともかく、自覚的ですらなく、そもそも生命とは延長のことなのだろうか・・・

舞台のことだけを語るとしても語り切れないが試みてみたい。
暗転空間のわずかな時間の間に舞台は組み替えられ、常に場所は創られては移動される。
暗転ののちシーザーによるあの音楽と音が聴覚を奪い、マッチの焔の中に浮かび上がる身体、表情...万有引力のこうした舞台演出に、つまりはずっと惹かれつづけているのだが(最初に観たのはおそらく、「ある家族の血の起源」である。その後に「犬神」「カスパーハウザー」などおそらく10作品は観ているもっとかもしれない)まるで古くならない。







座・高円寺1はクリエイティブな舞台空間のために、稼働可能な客席、袖部分が開口部になっていたり、かなり上部も舞台空間として駆使された演出になっており、それだけでも驚きに値する。
今回、万有引力公演は過去に2回観たことがある身内と、初めて観るという友人(学友で昨年の慶應義塾アートセンター 土方巽を語ること、英語研究会でおあいしたきっかけの)ダンス教師もしているしょうこさんと観劇。
私も実は千秋楽以外にも初日か中日と観たい演目だったのですが、しょうこさんももう一度観たいくらいです、と言っていただいたので次回 犬神公演は少なくとも2回は観たいと思っています。

泉鏡花作品「夜叉ヶ池」の時と同様、劇団の渡部さんに詳細が決まる前からお問い合わせさせて頂きました。
ありがとうございます。本当に公演では素晴らしいものをみせて頂きました。
初めて最前列でみせていただいたのですが、凄かったです、まさに前列は舞台と客席の境界線!
福岡弁で話している方がいました;それからキャストの方ともだいぶん目があいました、本当に素晴らしかったですね...みせるべきものがあるから創り上げる。台詞のひとつ一つに魂を感じる。
アイロニーと笑いと。光と闇も逆転するような、舞台転換、装置の象徴的な仕様。
もう本当にこれは観に行くとかいうものではなくて、目撃しにいくものです。
寺山修二が作る契機となった時代背景やインスピレーションを逆に、考えながら、フラッシュバックする舞台の時間を感じながら高円寺を後にしました。

開場までカフェにすこしいました。
しょうこさんとは高円寺て待ち合わせしたので、ひといき。心の準備を。。




出演

遺産相続人・ゴーシュ 高田恵篤
召使頭・カンパネルラ 伊野尾理枝
作男頭・ザウェル    小林桂太
女中頭・かま猫     村田弘美
釜炊き女・よだか    木下瑞穂
門番・ポラーノ      飛永聖
掃除婦・ダリア      森よう子
少年・シグナル     高橋優太
園丁・クーボー     岡庭秀之
場丁・オッペル     井内俊一
盗癖の従僕・ホモイ  森祐介
放蕩召使い・ブドリ   曽田明宏
洗濯女・ナドリ      杉村誠子
乳母・トメ子       渡部みか
料理人・ビタミン    田中真之
下女・ネリ        前田文香
少年・シグナレス   渡部剛己
小間使・ペムペル  服部愛弓
作男・ダネリ     今村博
乳搾女・ユリア    山本美里
下男・キンバエ    太刀川亮
下男・ケシゴム    秀也

・・・・・・・・・
"奴婢訓"2016 公演リーフレットより

こうして演者さん、俳優陣の方を書くとますます、もう一度観たい!と思えてきます。
観た直後はその時間に浸って言葉やあの舞台上と劇場で感じたものに向かい合いたくなる。
やはり2回観るのがいいと思いました..

次回公演は6月。同じ座・高円寺1ということです。実は今回初めて行きましたが、いい劇場ですね。

先行予約をしていたので、J.A.シーザー氏がブラジルで撮影してきた特製ポストカードも受け付けで頂きました。




カフェ アンリ ファーブル



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2016-02-14-13-52-38 高円寺駅から北口方面徒歩5分。400mくらい。わかりやすい。

2016-02-14-12-16-00





*主催 特定非営利活動法人 演劇実験室◎万有引力
 後援 杉並区 NPO法人劇場ネットワーク /座・高円寺
 助成 文化庁文化芸術振興(トップレベルの舞台芸術創造事業)
 企画製作 特定非営利活動法人 演劇実験室◎万有引力



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