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「種村季弘の眼 迷宮の美術家たち」(板橋区立美術館)の初日の展示と、その後レセプションに出席してきました。スパン・アートギャラリー(銀座)のご招待でした、ありがとう御座います。

ゆっくり展示を見たかったので、余裕をもって早めに美術館へいきましたが、正解です。
とても展示の作品がよく、セクションごとのテーマも多彩かつすべて見ると一つの回顧展というストーリーを感じられます。ぜひ時間に余裕をもって早めに行かれることをお薦めします。
というのも、時間をかけてじっくり何度も見たくなる作品が多いのです。
会期後半になると、アート・美術好き、ドイツ文学・演劇関係でも見に来るかたが多くなると思います。

レセプションが始まるまで展示室を三巡したくらい、面白い、そしてクオリティの高い(マニエリスムについては後程)作品が多い。

以下、初日を見た限りにおいて、よかった作品を挙げておきます。
おそらく、どんな雰囲気なのだろう?いつ行ったら・・と思っている方も多いと思うのです。

桑原弘明 <scope 「詩人の椅子」> 2001 
桑原弘明 <scope 「遠い星」 2005
加納光於<パラケルスス領 あるいは足を疼く飛沫を辿れ」 1979
池田龍雄 <ドクトルD.Varque Ame 氏の優雅な衣装箪笥 1969
クロード・ジロ <悪魔の宴>1772

ハインリヒ・フォーゲラー <春>1896

横尾龍彦 <秘儀> 1972

四谷シモン <SHIMON DOOL) 2014

マックス・クリンガー <「手袋」供々坩戞筺1881年

トーナス・カボチャラダムス
<にこにこ元気町>2000

宇野亜喜良 <<「白雪姫」 原画>>

ペーター・クリーチ <夜>

エドワード・リア 
「ナンセンスの絵本」1862年

・・・初日に見た限りにおいて、熱心に作品を見たり、凝視したり、遠くからみたり・・・強く感じたこと。
それは、やはり展示全体にあるテーマ「マニエリスム」だと思うのです。

美術史上、絵画作品はフィニという筆跡を残さない仕上げを、「神」のごときという表現で用いてきた。
つまり受容者は(我々)、どこから、無のマテリアルからあるいは白い紙の上に描かれ始め、そこでそれが終わって完成した作品という存在になったのか、それがあたかも、被造物のような人の技術の限界を用いて仕上げると、作品は「もの」や対象物ではなく「作品」「新たな世界」として現前することにあるのではないかと思った。

澁澤さんの回顧展においても、巌谷氏は「澁澤はマニエリスムを好んだ」という話をされていたが、この作品のクオリティへの審美眼が多彩なテーマの中で一致していると強く感じた。

桑原さんのスコープはいままでも何度かみているのだが、ボタンを3つおすと、スコープ内の光が変わり、
白昼的?、午後の光(窓辺に移る外の街並み)、椅子にある硝子玉の色彩変化、・・それ自体もとても興味ふかいのだけれども、カメラ・オブ・スキュラの時代や、ケプラーの天体観測を、スコープでつくって我々が覗いたときに、「はじめて見る世界」に不可侵に接することになる。
これは時間をかけるほどに、たとえば、室内を描いた画家たち(フェルメール、ハンマースホイ)とは異なる空間についておもうところが多い。

図録の監修は柿沼裕朋氏が行っており、種村品麻さんのお聞きしたところ、会場のキャプション・パネルも柿沼氏によるテキストとのこと。
これのテキストがとても明瞭で、多彩なテーマで構成された展示をなくてはならいブリッジの役割を果たしてくれるような気持ちになる。

迷宮の美術家たちの作品を見て、その迷宮のなかで、発見が多い展示です。
レセプションでは出品画家さんたちの紹介、板橋区と美術館からのお話(板橋区立美は35周年だそうです)、種村季弘さん息子さん種村品麻さん(スパン・アート・ギャラリー)のお話を聞きできた。
乾杯は秋山祐徳太子氏。

エドワード・リアの「ナンセンスな絵本」や澁澤さんや稲垣足穂、吉行淳之介からの絵葉書、手紙なども展示があって、なんとも懐かしい気持ちになる部分も・・・
やはりサブカルだけでなく、文学および演劇も89年-96年くらいの出版・公演などにとても私はコミットしていたのだな、と改めて思った次第。

期間中もう一度は行きたいと思っています。
台風も接近していて天候は?と思ってましたが、晴れて気温もたかくなり、夏着物小紋に変わり結びで行きましたが、残暑らしいちょうどいい気候でした。

それから、銀座スパン・アート・ギャラリーでは「もうひとつの種村季弘展」を9月18日から9月27日まで開催するようです。


種村さんのエッセイ「嘘ばっかり」が読みたくなってきました。
舞踏については、とても速い時期からニジンスキーのバレエについて参照したり、緻密かつ饒舌なものも多く、あらためて読みたくなります。


 
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