昨年(2008年)のアーツ&クラフツ展(汐留・都美術)から脚を運ぼうと思っていた、ウィリアム・ド・モーガン展へ行ってきました。
アーツ&クラフツ展やモリスに関心がある方、イギリスの中世復興や東方起源の文様などに興味が有る方、やきものなど工芸に興味がある方にもお薦めの展示です。

ラスター彩の色彩や光彩が美しく、現代アートのような感性が暴走したような表現でもなく、ただ法則化した文様としての工芸でもなく、創造とクラフトマンワークの中庸(via media)をみるような展示でした。
絵皿にさりげなく、野ウサギのモチーフが描かれていたり、ヒナギクやアネモネ、野性的な素朴な薔薇などモリスの初期作品に描かれたようなモチーフも美しく、ひとつひとつに個性がありながらも、一点ものといった主張性のつよさもなく、なんともマニュファクチュア時代の最後の輝きと造形といった趣でとてもよかった。会場が静かで、ゆっくり観られる、キャプションや解説も丁寧なので、大型展覧会の混雑・雑踏、あまりにも簡略化されたパネル展示などにあきたらない方にもお薦めです。入場料は500円。学生なら300円です。新橋での乗り換えついでにぜひみていただきたい。(別に私は広告のためにかいているのではありません・苦笑)

パルメット文やアカンサス(ギリシアの神殿柱頭に用いられる植物の文様。起源は神殿が最初、原始的には樹木だったことによるらしい)の葉のモチーフも美しい。色彩は、モリスが自然界にある緑として重用したのとに似たグリーン、ヴェネチアン・グラス特有の色ににた落ち着いたパープル、イスファハンや多くのイスラーム建築でもみられるクリアーかつ鮮明な青がとても美しい。
色とパターンの両方が際だっている。

一部INAXのタイルを使った青いタイルとマントルピースのある部屋の再現コーナーもよかった。都美術のアーツ&クラフツ展ではマナーハウスの再現コーナーがあると新聞などで書かれていて期待したのに、カーテンや壁紙、照明などもまったく期待はずれだったので、ピーコックハウスに似た室内の演出と、モーガン作品の展示のコーナーはなかなか良かった。空いていれば椅子に座って空間をたのしむことができます。

技術的には進展していった矢先、経営難でモーガンは小説家に転身したと年譜にあった。まさに・・・職人的技術・マニエラな価値観と、近代産業化の拮抗の結果という歴史的な流れの一つに該当しているだけに、複雑な気持ちになる。
同時に、日本ではじめて公開されたことの意義、殊更に政治経済がとなえる「ものづくり」とは一体、どのようなことに根ざしていくべきなのか、そういったテーマをも問いかけてくる展示である。
同時に、今回展示された作品の保存状況のよさが、英国のある特定の人の「物の品質と価値」の保存に対する姿勢をみるように思う。
ものの価値がわからない人は、単に大量に数量的に消費するだけである。

ただ、汐留ミュージアムの年間スケジュールには、ラファエル前派の画家イヴリン・ド・モーガンの絵画もあわせて展示すると書いてあったのにそれは実現できなかったようで、とても残念でした。とはいっても、ウィリアム・ド・モーガンの作品展だけでも観てよかったとは思いましたが・・・でもやはり残念です。
イヴリン・ド・モーガンやウォーター・ハウス、小さくてもいいですから展覧会が日本で行われることを期待しています....。


当日は朝から港区で用事があり、それが済んでから、りねさんにお付きあいいただきました。ゆったりと展示もみることができました。
今日も帰宅時間は22時すぎ・・・忘れないうちに更新します。
写真を含めて後ほど追記したいと思います。