2009年パリ・オペラ座学校公演の「スカラムーシュ」「ヨンダリング」が素晴らしかったので、以前から気になっていた新しいオペラ座学校のDVD「パリオペラ座学校の妖精たち」を購入。

1次選考数百名を超える候補生のなかから選ばれた研修生(8才-11才)の子どもたちがナンテールにあるオペラ座学校での学科授業、バレエレッスン、寮での生活など約半年の様子を記録したドキュメンタリーDVDです。
2009年パリオペラ座学校公演に参加していた、フランソワ・アリュ(Francois Alu)、カミーユ シャニアル(Camille Chanial)、ケリー・リフォー・ラヌリ、サロメ・シナモン(Salome Cynamon)、アリシア・バイヨン、ダフネ・ヴィドゥヴィエ、シモン・カトネ(Simon Catonnet)、アドリアン(Adrien Schaefers-Hojoji),エロイーズ(Heloise Jocquevien)たちの姿が観られます。
DVDでは8-11才だった彼らも日本公演では12-15才、フランソワはスカラムーシュ役を踊るまでになっています。公演もとても良かったこともあって、このDVDでの彼らの姿、学業とバレエの両方に打ち込む姿勢が素晴らしい。
自分の言葉で、考えや想いを「言語で語ること」そして「踊ること」そうした研鑽が記録されています。

研修生である子どもたちも素晴らしいのですが、教師の指導がとてもパッショネイトです。まさにイデア的人間観とエロス的教育(学ぶほうと教えるほうが共に「こうなりたい・こうあるべき」という方向性をもつこと)の実践の場をみるようです。
表現のレッスンのスコット先生の授業は圧巻、厳しい指摘もありますが、それは偽りの混じらない言葉で、子どもたちに向けた言葉です。大人の都合から発するものではないから子どもたちも受け容れて集中します。
「人をイライラさせてはいけない。特に疲れているときは要注意。疲れていても表に出してはいけない」こういったことは、小さい時にこそ教えなければ受け容れる時期を逃してしまうし、理由と一緒に訓示を与えている様子が素晴らしいですね・・何よりも飽きさせず、エネルギッシュ。また民族舞踊のクラスでの指導もすばらしい、「あなたの言うことは正しいけど、何もしらないのねというような言い方はすべきではありません、人に接するときは優しい気持ちで」専門的な技術や知識を学ぶほど、こうした基本的なことは大切なのだということがわかります・・・
寮で子どもたちをケアするスタッフの姿勢や言葉がけの真摯さも。

すべての子どもたちがオペラ座の研修を終えて入学できるわけではなく、苦悩し葛藤を抱えて、心身の不調を訴えて去っていくこどもたちもます。こうした面も含めて、最終試験に合格し、入学する子供たち・・・色々と観ながら学ばせられるDVDです。
入学後も、毎年試験があり進級できなければ退学、入団後も毎年昇進試験があり(エトワールは別格、芸術性を体現する人として芸術監督が任命する)カドリーユ、コリフェ、スジェ(主体ある人・ソリストからタイトルロールまでこの階級から踊る)、プルミエと試験が課せられます。また、オペラ座学校は卒業時にはバカロレア合格が必要となります。(バカロレアは大学入学資格・高校卒業資格であると同時に国家試験で、これに合格していればフランス中のすべての大学に入学許可となる)

『エトワール』とこの『パリオペラ座学校の妖精』たちはバレエファンやバレエ好きな人だけでなく、学生や子どもを持ったり関わる人、いろいろな人に見て貰いたい作品です。こういうドキュメントを公共放送でするとよいのですけれど。
ミラノにあるヴェルディの「カーサ・ヴェルディ」とともに、BSのNHKや教育テレビで放送するとよいと思うのですが。

今の教育テレビは、認知科学系の内容が多いので書き留めておきたいと思います。

それにしても教育学や倫理的教養・知識的な内容を含まないでも由とされる日本の学校教育の大半は、今の時点でも近代ヨーロッパで問題にされた「殖産興業」レベルなのだということなのではないでしょうか。つまり何か(全体性)の微々たる一つ、もっと言えば、部品や納税者、あるいは消費者としての「ひと」として見なしていて、その人自体は消去していくというような。

朝8時から学科の授業、午後から6時までバレエのレッスンというこどもたちの日常をみていると、忙しい日々でも元気になれます。精進するのみですね。

「オペラ座学校公演」のパンフレットで、元エトワール・現校長のエリザベット・プラテルが「教師たち、大人たちは守護天使のように見まもっています」と書いていたのが大変、印象的だったのだが、それが本当に解る映像作品でした。
パリ・オペラ座バレエ学校の妖精たち~エトワールを夢見て~ [DVD]パリ・オペラ座バレエ学校の妖精たち~エトワールを夢見て~ [DVD]
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ダンス・マガジンには、ピエール・A・ラヴォーのインタビューと写真も載っています。スカラムーシュの写真・記事ももっと載っているとよかったのに・・・
あと佐々木涼子さんが、バレエって本当は男のためのものではないの、というくらい男子生徒たちがすばらしかったと言っていたが、もともとフランスのバレエ・舞踏はルイ14世(太陽王・彼は美脚自慢だったらしいです)に起源をもつのですし、バレエが女性中心になるのはむしろ19世紀前半のロマンティックバレエやグランドバレエ(ロシア・クラシック)からなのでは・・・と思ってしまった。佐々木さんのバレエ記事はよく新聞にも掲載されますが、あの記事をよんで新たに劇場にいこう、バレエをDVDでも舞台ででも観てみようと思う人はあまりいないのではないでしょうか・・・
余計なことかもしれませんが・・・・。

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「パリオペラ座学校の妖精たち」と「エトワール」を一緒に観るのがよいと思います。エトワールには、エリザベット・プラテルの引退公演(「ラ・シルフィード」や舞台稽古中のピエール・ラコットの指導などもみられますし、ダンサーたちが自分の言葉やダンスや芸術、舞踏の解釈について語るのが聞けて充実。

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