ウィーンフィルの今年のニューイヤーコンサートの指揮がバレンボイム!とあって楽しみにしていました。
一体バレンボイムがどんなワルツやポルカを指揮するのかという点についてはもともとバレンボイムはバレエ公演の指揮の中で第一人者でもあるので同じ舞曲だからきっと良いに違いない、と思っていました。
(バレンボイム指揮の「スワンレイク」は隠れた名盤(DVD)です。)
選曲も彼らしく、ニューイヤーコンサートという範疇をこえたイヴェントのように思った。時代の節目、要としてのコンサートという思い。
洋の東西文化を意識したプログラムと、シュトラウスの小気味よい音、コンサートの間中、オケが一つの楽器のように聞こえた。ハイドンの曲では演出も楽しめたけれど、それ以上に楽員が減っていくのに音楽の余韻が漂い、改めて「音楽」は物理的に還元しきれないものなのだと感じた。と同時に指揮者ばかりに注目される現代で、一人ひとりの楽員と楽器が奏でる音のすばらしさと重要性が感じられた選曲だったと思う。自宅で中継をみながら何度か拍手したくなったニューイヤーコンサートでした。(そして実際に聞き終わったあと拍手をしていました)

バレンボイムだから、マラーホフがでるかな?と思っていましたが、久しぶりにニューイヤーコンサートでマラーホフが沢山踊っていてよかったと思い、怪我の後ずっと懸念していたから色々な意味で観られて感銘を受けた。ニジンスキーの”牧神の午後”を踊った「マラーホフの贈物」ではまだ怪我の後で存分に踊れない風だったので..

それにしても、ニューイヤーコンサート時のバレエに関する解説はいつも適切にされていないように思います。日本の場合、クラシック好き、バレエ好き、オペラ好きというようにジャンルが固定されてしまっている(ようにみえる)からかもしれませんが、31日少々見た、オペラとクラシックのまとめ特集(教育)でも思ったが、グランド・バレエの見所を「ストーリー」で説明するのはあまり意味がない。オペラもストーリーを解説したり評価するものではないのだが、バレエをストーリーで解説するいいかげんな習慣はやめてもらいたいですね...特に19世紀バレエは形式なのだから、見所を解説するとしたら、「場」と「踊りとその構成と固有要素」なのです。


話がそれましたがバレンボイムとサイードの対談は名著です。
新年のうちにその話も追記したいと思います。
重要なのは「自己」と「他者」を互いに認めること、そして対話をすること、その衰退した場を作ること。だから、よく言われたりコメントされるように「国境は関係ない、きえていく」というような認識では、何も良いほうに変わっていかないのです。
昨日もそういったコメントが放送されていたので、私は「違う」と思ったのでした。

ニューイヤーコンサートの後は中目黒ラジオを聞きました。
(これについても改めて書くつもりです)


2008年UKJAPANの12/31の上位ランキングに入ることができたようです。
記事はUK-JAPAN2008のサイトから読めます。
記事を見てくださった皆様ありがとう御座います。
英国関連ならばどうしても書きたい...と思いながら時間ぎりぎりに書いたものの間に合わなかったアーサー王伝説と19世紀末美術と映画の記事は掲載されなかったのですが、またそれについても総括として書きたいと思います。

年末は30日まで仕事のためか疲れが出るのか大晦日や新年は熱がでたり風邪を引いたりが多く、今回も少々疲れが出て新年の更新が遅くなってしまいました。。

ともかくも忙しない年末年始の最中、ニューイヤーコンサートとバレンボイムのコメントとプロージット!ノイエ・ヤールの声に新年と節目を感じられた。


バレンボイム/サイード 音楽と社会バレンボイム/サイード 音楽と社会
著者:A・グゼリミアン
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映像作品というよりもマラーホフの記録としてとても重要なのが「ナルシス」(DVD)だと思います。バヤデルカのレッスン、ナルシスのレッスン風景は特に若いときのマラーホフがいかに才能を持っているかが理解できる。「薔薇の精」「ナルシス」はバレエにおけるニジンスキー的な流れ、ギリシア的美と詩情の系譜がもっとも現れている。
バレエ・リュスの芸術が、19世紀パリを席巻して評価され、詩人、音楽家、画家の活動の中に位置づけられ、互いに影響を与え合った存在(事件)になったことと、アメリカでのバレエリュスがその価値を本来性ではない方で独自解釈され、アメリカ的に吸収されてしまう事は対照的だと思う。(しかし南米にバレエが根付いてキューバで花開くことはとても重要に思える。このあたりは、「素顔のバレエダンサー」(DVD)にアリシア・アロンソによって語られている。)
ベルリンに来た直後でまだロシア語を喋っているマラーホフが現在ではほとんど英語でインタビューに答えているのも感慨深い気持ちになりますし、G.バルビエの絵とともに語られるニジンスキー的な舞踏の系譜もとても興味深く貴重な映像。

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