アーツ・アンド・クラフツ展ではウィリアム・モリスとモリス商会の壁紙や書籍、ファブリック、タピストリー、ランプなど大変見ごたえがあった。
壁紙では初期からのデザインの変容が興味深い。最初期のデザインは、直線的な配置で<ひなぎく><石榴>などは規則性のある配置でモチーフがどちらかというと単独で配されている。これがだんだんとアラベスク文様を意識した曲線のバランスが美しいデザインに変容していく。


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以前、実際に使ったことがある<柳の枝>も展示してあった。イギリスの自然の風景からインスピレーションをえた柳の枝のモチーフが、アラベスク文様として見事に調和しているデザインと色彩。
また<イスファハン>に代表されるようなアラベスクも美しい。かつて澁澤龍彦が「フローラ逍遥」の薔薇の項でとりあげた”イスファハン”の庭の薔薇。偶像崇拝を禁じているイスラーム美術は、唯一の中心から生まれる美を幾何学と植物のモチーフであらわした。イランのブルーモスクに代表される様式美だが、モリスはモダンデザインとして取り入れている。
<るりはこべ> <ばら>などの壁紙、ベルヴェットに印刷されたモチーフの見本帳なども展示してあった。
書籍は『チョーサー作品集』が眼をひいた。木版モリス、挿絵バーン=ジョーンズ。
本文と挿絵が一体化した書籍、その原本が見られる。
またウォルター・クレインの「シルク・ダマスカスのドイリー」は花の擬人像がモチーフ。ブルー・ベルなど英国に伝統的な象徴性を持つ花が扱われているのはミレイ[オフィーリア」に描かれた花々と共通している。抽象概念は女性の擬人像として描かれるのが西洋美術の伝統。あの「自由の女神」も「自由」という概念そのものの「イメージ化」であって、「自由の女神」でははいのだから!

天使像も女性的に描かれるのではなく、ビザンティンを思わせる中性的な天使像として描かれていて、東方との再会を果たしているように思う。

アメリカまでのアーツ&クラフツ運動を取り扱っているが、やはりとりわけ、<芸術と手仕事><工芸と芸術/生活と芸術>に主題をおいたモリスからモリス商会の作品に惹かれる。チェアの展示も貴重。

額絵は柘榴やひなぎくがあったので購入。
アラベスク的な文様の<いちごどろぼう>や<ばら><るりはこべ>なども欲しかった。このデザインにあうフレームも一緒に買えると実はいいのですが。ポストカードもミニフレームとセットであるといい。携帯ストラップもモリスの<柳の枝>なのですが(頂き物)ペンケースが使いやすそうで◎でした。

ところで会場にもあったがモリスの壁紙はリリカラの壁紙で比較的容易にリフォームや自宅建築の際に取り入れられる。通常輸入の壁紙はボーダーなどで一部取り入れるのだが、リリカラではモリスの壁紙(ラルフローレンの壁紙なども)があり、モリスのグリーンやブルーの壁紙を取り入れられる。壁紙などは自分で選ぶのが本当に楽しい。モダン、クラシックどちらの空間にも合う実感があるし、何より自然な色彩を用いているので気分が落ち着くのです。
UK-Japan 2008 WEBサイトに記事掲載


汐留ミュージアムで1/18までとの事。会期中もう一度行けたらよいと思っています。


モリスとバーン=ジョーンズがオクスフォードで出会い、ラファエル前派とアーサー王伝説に関わって、中世書物を復活させようとしたことに関しては、写真と図版入りで紹介されている『本と人の歴史事典』(柏書房)高宮利行先生の本がお薦めです。


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