19世紀のグランド・バレエは異国情緒を取り入れた演目が多いですが、その中でも『ラ・バヤデール』の古代インド、『ファラオの娘』の古代エジプトへのタイムスリップという演目はスペクタクルシーンもあり、舞台美術や衣装もエキゾチックで楽しめる演目かと思います。『ラ・バヤデール』は最近上演される機会も増えました。DVDのオススメは、やはり先日記事にもした英国ロイヤルとパリ・オペラ座のものです。
『ラ・バヤデール』の解釈は二つありますが、やはりドラマ上しっくりくるのはマカロワ版のロイヤル・バレエ版かと思います。戦士ソロルと寺院の舞姫ニキヤは相思相愛(密かに)なのですが、ラジャの娘であるガムザッティと戦士ソロルと婚約。どちらかというと形式重視のグランド・バレエでソロルをめぐってのガムザッティとニキヤの個人的、立場の対立などドラマ性も見所です。ソロルはイレク・ムハメドフ、ニキヤがアルティナイ・ムラストゥーワ、ガムザッティは英国ロイヤルのプリンシパルで昨年引退したダーシー・バッセル。このバッセルのガムザッティがとても良いのです。オペラ座のバヤデールは、ローラン・イレールとイザベル・ゲラン、ガムザッティはエリザベット・プラテル(エトワールで現オペラ座バレエ学校の校長です)なのでこちらも大変見ごたえがあるのですが、振り付けがヌレエフ版なので、たとえば発表会やヴァリエーションの参考にするには英国ロイヤル版がよいと思います。ガムザッティのヴァリエーションは、イタリアン・フェッテとフェッテ・アン・トゥール・ナンが入った難度の高いもので、華やか。とても見ごたえがあります。
寺院崩壊のスペクタクルも迫力があります。
 また、影の王国のソリストがヴィヴィアナ・デュランテ、ゴールドアイドル(金の仏像)には熊川哲也が出演していますから見ごたえ十分です。そして英国ロイヤルの伝統でもある演劇性・ドラマ性という点では、アンソニー・ダウエルが大僧正を演じており作品全体の深みが増しています。DVDも買ってあまり何度もみないものも多いのですが、この作品はリピート回数が多いです、お薦めのソフトです。

ダーシー・バッセルがインタビューで好きな演目とこたえていた日本では上演されたことがない「マーラー大地の歌」などもDVD映像化されるとよいのに、と感じます。


UK-Japan 2008 WEBサイトに記事掲載!

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