12/13からはじまるジム・ランビー展@原美術館のプレビューイベントにUK-JAPAN公認ブロガーとして12日(金)に参加してきましたので当日のレポート+展示の感想などをUPしたいと思います。プレビュー当日、17:50に原美術館エントランスに集まったあと、18:20分よりジム・ランビーからの挨拶があると事務局の方からご案内を頂き、いよいよ美術館内へ。
 まずは、エントランスホールから一番近いギャラリーに入ると、ジム・ランビーのクリエイトした空間の象徴ともいえるビニールテープによる床の幾何学模様が目に入る。曲線を多用した半扇形のモノクロームな規則性。いつも見慣れている原美術館の白い壁にフローリング、ダウンライトのライティングとは異なった空間がすでにそこにある。キャプションをみると「白鳥座」・・・天井には真鍮や金属枠、木製フレームなどさまざまな形状デザインの鏡を組み合わせてできた星座オブジェが。異素材から生み出されるジム・ランビーの「星座」はランダムなようで、でも創意のもとに統合しており、下から見上げる私たち「観るもの」を映し出している。同時に床のパターンも映しだされていて面白い。そして、床面に一部埋没してるような立方体のオブジェ。鉱物や鉱石のキューブのようなイメージをもつがよくみると、LPレコードの背表紙部分が!ヴァイオリン・コンチェルト、ABBA、エビータなどジャンルも様々、ミックス感覚が楽しい。コンクリートで固められたこのキューブ状のオブジェは廊下やギャラリー、美術館の1階、2階とあちらこちらに配されている。一部埋没したものはギャラリーの空間の「外部」(みえない世界)がまだあるような視覚効果に繋がる。鏡にうつしだされた面に映し出された”世界”はもうひとつ+プラスαの世界のように思えてくる。
それは次のギャラリーにも展開されている。椅子を積み上げ、鏡の破片で作られたバックのオブジェが飾られたカラフルなアートにも現れている。ふと不思議な気持ちになったのは座面が無く、きっちり半分に「切り取られた」ものを、観ている私たちはそれでも「椅子だ」と認知して楽しんでいるということ。目の前のアートを観ながら、目にした私たちは自分のイメージを同時に記憶や視覚を通して「見て・感じて・作って」いるのだ!未知の世界というタイトルが次第に実感できてくる。ここでも床の白黒のテーピングで作られた規則正しいパターンが印象的。ピンク、ライムグリーン、水色、フューシャピンク、などポップな色使いで丁寧にペイントされた”椅子”のイメージと融合している。全体に白いライティング(白い発光LEDライト?)がされ、カラフルなペインティングや、鏡を使ったオブジェを輝かせているのも印象的。

原美術館のギャラリーを周り、今まで写真でしか見ていなかったジムランビーのアートを体験していると、セレモニーのアナウンスが流れたのでホールからライトアップされた庭へ。プレビューイベント参加者にはワインやフルーツジュースなどがサーブされる。普段と違う夜の原美術館の後庭は虹色にライトアップされていて美しい。イタリア産の赤ワインを頂きながら、一緒にイベントに出席したブロガーさんたちと感想や美術の話をしたり、ジムランビーの去年の展示の内容や、ラファエル前派・ミレイ展の話をしていると、いよいよジム・ランビーと英国大使、原美術館からの挨拶が。日英150周年、そして昨年につづいてのジムランビー展の開催、原美術館開館28年以来はじめての英国アーティストの展示であるお話が聞けてとても充実した時間でした。床のテーピングを手伝った日本の学生の方や展示のアシスタントをされた方への感謝のコメントなど暖かいコメントが印象的。19:00すぎからは音楽活動やDJもしているジム・ランビー自身によるDJも始まって、アート+音楽の両方の体験ができるという充実した時間だった。

 2階のギャラリーには、ドアに複数のドアノブがいくつもついた作品。白い壁にビビットな赤や黄色、青のドア。ブラスや陶器のノブ、レバー式のノブなど、ランダムにつけられたドアは「あらゆる方向性への開放」を思わせるデザイン。わずかに開いているように作られた開かないドアもまた、床に埋没したまたは突き出しているキューブ状のオブジェのように、見えている空間にはみだした世界を感じさせて面白い。通常目にする「三次元」の空間をすこしだけ超えてみせてくれる感覚が愉しい。そして2階には人物の白黒ポスターに油彩をコラージュした作品がいくつかある。油彩は北方絵画の静物画に描かれるような花々。薔薇やチューリップなどが埋もれるようにコラージュされた花々から人々の表情が覗く。「一言で言えばフローラ」という澁澤龍彦氏が言った言葉が脳裏をよぎるようで、同時にボッティチエリの「プリマヴェーラ(春)」で花の女神フローラに変容するその瞬間に口から花々が溢れ出しているというあの象徴性を思い出していた。抽象美術の魅力は「意味」を超えていることだと思う。勿論、質問することができてもランビー自身はきっと自らのアートの「意味」を語らないだろう。アーティストにとっての「意味」はすでに作品の中に溶け込んでいるのだし、きっと優れた作品ほど幾通りにも、解釈できるだろうから!

 ジム・ランビー展に行って思ったのは、見る角度や立つ位置、部屋の回り方によって「見えかたがまったく違う楽しみがある」ということ。カタチとして作り出されたものの中には、語られる以上のイメージがあり、だからこそアート作品をみたときには、見ている私たちはいつもと違う世界を体験しているのだから。
キューブの中にあるLPジャケット(Mの字がさりげなくモチーフになっている?)にどんなレコードが隠れているのか、そこからメッセイジが読み取れる様な楽しみなど、何より実際に観て・体験してみることをオススメしたいです。
http://www.ukjapan2008.jp/events/20081213_100399j.html
忙しない時間が増え、冬景色が深まっていく季節ですが、カラフルなイリュージョン体験ができます。

UK-Japan 2008 WEBサイトに記事掲載!