11/12に限定盤で発売された英国ロイヤルオペラ(コヴェント・ガーデン)の『ラ・トラヴィアータ』をみて満ち足りた舞台だった。映像でここまで入りこめるオペラも稀だと思う。というのも、この作品はかのヴィスコンティ演出以来27年ぶりの新演出で、舞台設定も原作どおり1840年代のパリになっている。

ヴェルディは原作がデュマの自叙伝的作品なためあたりまえのように「同時代」の物語として作曲・設定したのだが当時はその同時代的オペラが流行らず、1700年代になってしまった。このロイヤルオペラは19世紀中期のパリの裏社交界の雰囲気が舞台美術や衣装にもよく現れており、なによりヴィオレッタ(原作ではマルグリット)役のゲオルギゥーが実にぴったりと役にはまっているのです。見た目もそうですが、アンジェラ・ゲオルギウーが「花から花へ」と歌い、自身の内面の葛藤を歌うところから、アルフレードの父と問答を行い、「私は死にます」と押さえていた感情が極まるところなど迫真の表現である・・・

3幕の謝肉祭の喧騒と犠牲への悲哀と歓喜・・この都市と群衆の楽観的残酷さがヴィオレッタにも悲劇に映るような演出など些細な照明の変化や工夫、コントラストの利いた舞台装置も素晴らしい・・・

つくづく、ヴェルディの音楽性と表現というものにアンジェラ・ゲオルギウーは合っていると感じる。コアなエッセンス、繊細さと大胆さ、聖性とドラマチックな部分がとても合っていると思う。アルフレードの「乾杯の歌」も抑制が利いていて原作の性格を取り入れていてとても感じがいい。

お薦めのDVDだし、これを機にオペラを見てみようという人にもお薦めできる。
なによりこの限定盤では名盤が3000円しないのだから...
ショルティの指揮による音楽もテンポが活気ある19世紀のパリにあっている。
ヴェルディの音楽を堪能できる舞台ライブだと思う。

ヴェルディ:歌劇《椿姫》



ヨーロッパの都市は人口10万人を超えると大抵オペラ・ハウスを持っている。
そしてシーズン中、毎日公演している(オペラかバレエをやっている)オペラハウスは、英国ロイヤル・オペラ、メトロポリタン、チューリッヒ、ベルリン、バイエルン、なのだそう。
つまり劇場は町の”顔”なのである。日本は1998年に新国立劇場ができたが、専属オケはまだない。劇場は単なる娯楽空間ではないし、それ以上に「場」なのだと思う。観客である人々が何かを「共有」できる場所、そうした空間が何よりも重要なのだと思う。ハコを新しくすればいいというわけでなないし、例えばイタリアには2万人が入る古代時代に建てられた野外劇場があり、しかもそこの音響はすばらしいのだという。時代を超えて「共有」できるものが重要なのだと思う。日本は新しさのために、作り直すことを第一にするが、それでは共有できるものが衰退していくといえないだろうか。コヴェント・ガーデンでのカーテンコール時の拍手や喝采を見ていて、また自分がいままで行った素晴らしい舞台での経験を思い出すと、そんなことを感じる。

UK-Japan 2008 WEBサイトに記事掲載!