英国バーミンガム・ロイヤルバレエの新作が初台新国立劇場で上演される。
バーミンガム・ロイヤルバレエといえば、2005年の新国立劇場で上演された『カルミナ・ブラーナ』、ドイツのオルフ作曲、かの『カルミナ・ブラーナ』をディビット・ビントレーが振付した作品。オーケストラ、合唱、ソリストの声楽(ソプラノ、バリトン、カウンター・テナー)と舞台芸術の粋を集めた舞台だった。『カルミナ・ブラーナ』の歌詞を現代的に”読みかえ”た演出と振付が印象的なのだが、現代的な切り口かつ表現されているのは普遍的な解釈コードで興味深かった。オルフの音楽がまた新しく感じられた。とりわけインパクトがあったのは、女神フォルトゥナ。目隠しをし、赤いドレスで歩みを進める振付が、躍動的な旋律に少ない動きでシンボリックに舞台の空気を支配する。
女神フォルトゥナは、運命の女神。
絵画の中ではときおり、球体の上に佇む女性像(擬人像)として描かれる。不安定な球体。絶頂はまたすぐに奈落を意味する運命の車輪のイメージ。それに翻弄される人間と世の普遍性がモダンな中にしっかりと浮き上がる幕切れだった。

アラジンはどのような舞台に仕上げられているのだろう?
ランプの魔神のような存在をジニアイと英語では云うが、何をビントレーは魅せてくれるのか、カルミナ・ブラーナの斬新性と主題解釈の小気味よさを思い出すと、とても気になる演目である。

オルフ:カルミナ・ブラーナ
オルフ:カルミナ・ブラーナ
英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ チャイコフスキー:バレエ《くるみ割り人形》全2幕


UK-Japan 2008 WEBサイトに記事掲載

今回の『アラジン』の音楽は新作の音楽を使うとの事。
バレエでは、オペラを題材にしたドラマティック・バレエの新作が多かったが、ビントレーが作った『カルミナ・ブラーナ』やチャイコフスキーの悲愴を使った『スペードの女王』などのような音楽と詩や文学を題材にしたものももっと出来ればよいと思う。ヴェルディの『レクイエム』やブルックナーなども良いのではないだろうか、と個人的には思うことが多い。英国ロイヤルの『マーラー・大地の歌』などもまだ日本では上演されていない。ぜひ今後上演される機会があると良いと思う。
観客も新作の舞台をもっと観に行って舞台を育て・共有することが重要だと思う。
”クラシック”も最初は初演だったのだから。