ミレイ展、ジヨット展につづき期待している展覧会はウィリアムモリスの展示があるアーツ&クラフツ展とサンドロ・ボッティチエリの作品が見られるらしい丸紅コレクション展。ウィリアムモリスの展示会は来春1月から都美術で行われる模様。

ラファエル前派のダンテ・ガブリエル・ロセッティらとの接点があるモリスは産業革命の反動ともいうべきモリス商会を設立。大量生産、機械生産が世情だった英国で、生活を芸術とするためにアーツ&クラフト運動を行った。
インテリアやテキスタイル、家具が好きな方ならおなじみだと思うが、モリスの壁紙やパターンは自然のモチーフである草花や植物をベースに文様化してある。その色彩は自然界にある色を使っている。パターンは自然であるが幾何学的な規則性もあり、細密とディフォルメのバランスが良いためかモダン、クラシック両方の空間にマッチする。


英国では極端な機械論や効率化の構築的な部分も強い一方で、それらの価値を問い直し、中世や前近代的な伝統や価値を復活させ受け継ごうとする意思が素晴らしいと思う。ベアトリス・ポターなどもそうだが、培ってきた技術や美はつよい意思と実践で守らなければ失われてしまう。そういったものはとても美しい。

自宅でもモリスの壁紙を使っている。インテリア小物もモリスの製品をいくつか使っているがあきがこない。会場で売られるグッズで文具や額絵やティタオル(アイリッシュ風なリネンなどの)があればぜひ買いたい、スカーフやティッシュケースなどもあると良いと期待・・・しているのは、モリス展のチラシ・フライヤーが大変デザインが良いためでもあります。そのチラシをみると家具なども出展されるようなので期待している。
変形版で印刷の色も映え美しい。

ところで、モリスは、マルキストかつ、プロレタリアート思想を支持しながら、中世の価値を認め、インテリア製品や美しい書籍(本とは機能だけではない。フィレンツェの写本を例に出すまでもなく、それ自体が特別なものなのだから)を作り出した。重要なのは、モリスがプロレタリアートの解放のために生活と芸術を一致させようという意思をもっていたこと。

大量消費や個人消費が飽和状態にまでなっている現代(私化現象)だが、モリスが行っていたことは今と同じことがいえるのではないだろうか。つまり質を追求すること。しかもそれは、単なる富裕層のためや「売り上げという数字」を目指すものではない。

優れたアートは思想を実践させる。アートは感性だけで生み出せるものでもなく、技術だけでもなく、思想、その人の考えや思いを実践の形として見せてくれる。「時代を超えているもの」「普遍的なデザイン」というのはそういうものであり、同時に時代をも反映するのだと感じる。

モリスやモリス商会については『ウィリアムモリスの全仕事』が詳しく、彼らが何を大切にしていたかがよく解ると思いますので、ぜひ展示に行かれたら図書館などで読んでみて欲しいです。

図説|ウィリアム・モリス―ヴィクトリア朝を越えた巨人 (ふくろうの本) (ふくろうの本)
図説|ウィリアム・モリス―ヴィクトリア朝を越えた巨人 (ふくろうの本) (ふくろうの本)
ウィリアム・モリス 2009年カレンダー
ウィリアム・モリス 2009年カレンダー
ウィリアム・モリス―ラディカル・デザインの思想 (中公文庫)


UK-Japan 2008 WEBサイトに記事掲載!
追記
自宅(ヴァニティ/洗面室)に使用したモリスの壁紙についてはカテゴリから記事写真が見られます。同じものが舞浜イクスピアリのガーデンサイトから2階に上がる階段でも使われていますね。