日本では殆ど観られない、イタリアへ行っても西洋美術史に興味がない方には特別視されないかもしれないジョット展へ行きました。特別視されない、というのは日本における西洋絵画の位置づけが、印象派の前か後かといったような特定の美術、もっと言えば、西洋美術が最も特別な絵画であった時代を過ぎた後が中心になるためかもしれません。しかし、ギリシア・ローマからルネサンス、フランス古典主義で絵画芸術が体系化されるまでの流れと、西洋思想の流れと美術の流れを追っていけば、おのずとジョットやマザッチョ、ボッティチエリ、リッピ、・・そしてミケランジェロ、ラファエロ、レオナルドといった流れで絵画を解読および眺める視点からすれば、興味のつきない展示です。先だって、ミレイ展をみていたので、ミレイが回帰したいと熱望したのはこの絵画の静寂な質感と内面世界が関わっているのだということがよくわかると思います。

金を用いた細密な背景や文様なビザンツの影響を感じ、文様はイスラーム的な内面性表現、何より東方教会的な思想を感じます。
人物は、ローマからの自然な人物描写を復活させ、12世紀ルネサンスと初期ルネサンスの流れを感じることができます。
思っていたよりも、多くの作品が来ていて、ジョット派の工房やその後の画家によるフレスコやテンペラ、ステンドグラスもあり、想定していた時間ではとてもみられないほどでした。解説文がとても丁寧で、図録の解説文もわかりやすい。

印刷では絵画は再現できません。
絵画とはリアリズムでは表現不可能なものが表現可能なのだと、感覚と主観を重視した絵画の流れになるまえの、絵画が物質とは扱われなかった時代の、そもそも絵画ではなかった時代の、力を感じられる展示だと思う。

会場の説明パネルが素晴らしく、ローマから、ビザンツ(イスラーム世界との関わり)、ルネサンス・・・と続く図解したものがあり、それはぜひ展示会のチラシにも入れてもらいたいと思った。図録にもパンフレットにも載っていなかったので、わかりやすいだけに残念。

図録は子供向けのパンフレット、小パンフレットとセットで2500円、図録のみだと2000円だが、この時代を扱った資料は少ないのでとても貴重。

天使の嶌が初期ルネサンス独特のカラフルな色彩で、また最期の審判図の地獄絵図が迫力がある。宗教改革時までは、聖書を読むのは聖職者だけで、一般信者は絵画や説教だけがその世界にふれるものだったので、やはり「絵画」として扱う以上のものだったことがわかる。

フェルメール展よりもずっと、特筆すべき展示だと思った。

http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/041.html