ディケンズの英文は英語ならではな音遊び、言い回しや詩情もあり英語原文で読むと味わいがある。そして当時の社会状況や歴史的背景がさりげない単語で表されていたりする。「クリスマス・キャロル」や「オリバー・ツイツト」の原作で知られているが、短編も味わい深い。(ミレイとラファエル前派を新聞で酷評したのもディケンズなのだが)

the most astonishing picture-book; and all new and true.

Charles Dickens.”Vision of life”


このディケンズの短編の表現にはっとさせられた。
素晴らしい絵本たちに出会う子供時代。
子供たちにとって、それらは御伽噺・物語でも「本当のことで・あたらしいこと」に感じられ、そして楽しく生き生きとした体験となるのだ。
まるで本当に体験するように、本を通じて、出会う物語についてシンプルに描写されている。

そして以前図書に関する講演で聞いたことを思い出したのだが、丁度小学生の4・5年生ごろから、いわゆるノンフィクションや科学・自然絵本などに興味が移っていくらしい。
ディケンズの描写から、やはり幸福な子供時代という時期に、本を通じて出会う楽しさの原体験が作られるのだろうと思う。
ディケンズの絵本の描写は、美しい自然の中で、雨だれを見たり、風の音を聞いたり、雪が降り積もるのを眺めていたり、しかも、とても創造性の豊かな中で--そんな体験とともに語られるのが「絵本」と「物語」の話なのだ。

ディケンズの時代ではこれは子供時代の当たり前のことだったのだろう。
では今はどうなのだろうか。
本を通じて得られる楽しみ、新しい話、物語・・私の場合は歴史好きなのもありそういった分野で新しい発見や、世界観を新たにさせてくれる本や文献を読むのはとても楽しい。そういう「楽しみ」をもてるのもやはり子供時代のある時期にある程度もてるかもてないか決まってしまうのかもしれない。

私も多くの絵本や童話を手にした。多くは今はおそらく廃刊されている、ヨーロッパや世界の童話や伝承などの本だった。絵もすばらしく、その風土や文化が伝わるような色彩とデッサン、風景がその土地の画家によって描かれていた本だった。
おそらく小学館から出ていたシリーズだったと思うのだが、今そのような本は書店にはない。話がすきでも、色や絵柄があまりにもアニメ調の平面的なもので、デッサンもデフォルメされすぎている。これは原風景にはならないだろう。
人が考えるきっかけとなるのは、ヤスパースによれば「驚き」がもっとも最初の動機である。異文化を感じる絵柄、すくなくとも物語の世界観を写しているような絵でなければ、挿絵の意味がない。文字という像を持たない表記から、イメージを獲得する経験がないと、文字も絵も解読できなくなるのではないだろうか。



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