GW中のお昼公演でセルゲイ・フィーリン、舞台美術が良さそう+娘が観たいという素朴な理由で上のほうの席で行きました。これが、完成度高い。

ステパネンコさんが来日不可能になってしまい(というかチケットの売れ方のも理由があったのではと思っている)更に数日前にキャスト変更。

ニキヤ マリーヤ・アラシュ
ガムザッティ エカテリーナ・シプリナ。共にリーディングソリストに変更。リーディングというのは、いわゆるソリストの中のファーストダンサーということなんでしょうね。

セルゲイ・フィーリンはノーブルかつしなやかな跳躍がとても観ていて気持ちがよい。脚先が綺麗、ソロル役の衣装は結構服に覆われているのですが、身体能力の高さと優美さがよくわかる、それだけテクニックも安定しているのでしょう。凄い。
観ていて美しいし、柔軟で伸びがある。歩く姿も表現を感じます。意外とこういう事って台詞のないバレエではとても重要。
舞台への惹かれ方に関わるのだと思う。


ガムザッティ/シプリナも登場からソロの場面が良かった。会場も沸いてました。
踊りの見せ場は2幕ですがイタリアンフェッテのあとのフェッテはちょっと苦しそうかなと思えましたけれど、ガムザッティ役のシプリナは演技も雰囲気も踊りも伸びやかで良かった。ラジャのお嬢で無邪気な優雅さの部分と、ガムザッティの強さがどちらも凄かったです。


ところでグリゴロービッチ版のこの作品、とにかく踊りの構成が豊富で次から次へと、見せ場があってとても面白かった。マイムも少なめで、踊りで構成されているのが見事。
バヤデールは、英国ロイヤル版(DVD)とマラーホフ版しかしらないのですが、このボリショイ版が一番みていて退屈しないというかバヤデールがより面白く感じられる構成と演出でした。ガムザッティが登場するシーンもいかにもラジャの娘という感じで、お付きの者たちに囲まれながら、ポアントで踊りながら、で華やか。この演出はよかった。

2幕で踊られるソロルのソロは、3幕の影の王国で踊られる為、2幕は新しいソロルの踊りが足されているそうで、ソロルの踊る場面も増えている印象。やや音楽はいいところなのに移動するだけ,,というような振付に?と思う場面があったものの、良かったと思う。
「黄金の仏像」はこの場面で踊られるので、その意味が正しいかどうかは分かりませんがしてバレエとしてはこのほうが落ち着くような気がします。しかしいつも思うけど仏を踊らせてしまうのだから、神をもおそれぬ大胆さですね...フランス人・プティパは。この踊り、楽しいから好きだからいいのですけどね(笑)丁度よい金色具合でメイクや装飾も自然でした。


「影の王国」は照明も幻想的で良かったです。影=魂と同義語らしいこの場面ですが、他の映像だととにかく厳か〜に踊られる印象が強いですが、ボリショイは、かなり歯切れのよいヴァリエーション(1−3)でした。コールドはあくまでも青ざめた静の美という感じなのですけれど、対比的に面白かったですね。ソロルの2幕に入るソロがここで踊られるので、バランス悪いとは思いません。
3幕のニキヤはとても綺麗でした。他の版で、寺院の前でパドトロワになるよりもここで踊りの見せ場があるほうが綺麗だと思いますね。


この日一番ブラボーがでていたのは「太鼓のおどり」2幕のソロやコールドの間にはいる民族舞踊的なコールドとソロですが、原始的で躍動的、なだけじゃなくて、観ていて踊り自体が美しかったです。このあたりがボリショイの醍醐味なのでは、と思いました。 あとでNBSのサイトをみたら、ボリショイのこの太鼓の踊りは有名で単独でも踊られることがあるとか。
全体的にみても群舞でもバリエーションでも、パの形はどれも綺麗で形が残りつつ、ダンサーそれぞれの身体能力の高さ、表現が綺麗だということのバランスが印象的でしたね。なんといってもコールドも体型もほとんど完全に揃っているし...
層の厚ささを感じた。

ニキヤとガムザッティはどちらも好演・熱演だったと思います。でも発表のままプリンシパルがニキヤとガムザッティを踊っていたら、バリエーションやソリストの踊りの部分が更にグレードアップしていたのだろうな、と思うとその点はほんのすこしだけ残念、贅沢ですけれど。

今日の東京シティフィルは、音量も演奏自体の質も良かったと思います。
バヤデールの編成は大がかりなのかも?指揮者の表現が適切なのかな、良かった!

忘れるところでしたが、衣装もよかったです。
チュチュが白に青や橙にグラデーションが入っていて、原色を使わない柔らかい中間色で、ダンサーたちに合っていました。頭飾りも自然で綺麗でした。
ニキヤの2幕での花籠の踊りの衣装、ワインレッド系(といっても落ち着いた色味で上品)の色遣いが効いてました。

パンフレットみていて、いつもよく分からない野人っぽい人たちが苦行僧だと初めて知りました...苦行僧のイメージがちょっと違うのではないかと思うのですが;;だから、ニキヤたちは聖水を彼らに与えるのですね...。

2幕まで前の席の方がすごく身を乗り出していて、がんばっても舞台半分に被る..声かけたら次の幕からは気を付けてくれたけど、やっぱりあまりにも乗り出されちゃうとねえ。歌舞伎座だと、「前傾姿勢での鑑賞は他の方に迷惑になりますので注意」みたいなことを開演前にアナウンスするけど、東京文化でもアナウンスして貰いたいです。
東京文化自体、席が前の人に被る設置の仕方で、オケコンサートにはいいのだろうがやはり総合芸術鑑賞向きではない部分も。

バレエは総合芸術で、それが完成の域になったのはロシアなのだった、と思う公演でした。満足。帝政ロシアを全肯定するわけではないけどプティパ作品はこのレベルで公演してこそのグラン・バレエ(19世紀クラシック・古典)なのかもしれません。

終演後は、近くのロシア料理「マトリョーシカ」に行ってグルジアワインや壺焼き食べました。ロシアンティーには赤ワイン・ジャム・蜂蜜が入っていてこれがまた美味しい。

つぼ焼き。中身は3種から選べて、私が頼んだのは、「海老ときのこと豆乳入り」きのこの風味が美味しいのだ。カボチャや根菜も入った豆乳シチューです。あつあつ。