5a50c626.jpg1幕
幕があくと写真でみた「象をかたどった舞台装置」中央からダンサーたちが次々と出てくる。マラーホフ(ソロル)登場。宅鉢僧の踊りはスピード感あふれ、かつ回転や腕の振りつけも複雑だが美しい。期待が一気に高まる。マラーホフ版のみどころは男性ダンサーの踊りを改訂して増やしている所で、それをみる事も今日も目的にひとつだから。
マラーホフ、ヴィシニョーワ、の踊り、それにガムザッティを演じ踊るベアトリス・クノップの写真をみて以来、その雰囲気から「きっといいガムザッティとその踊りが観られる」と期待していたので、それも大きな目的。

ヴィシニョーワのニキヤは、想像よりもはるかにはまり役であった。
寺院の舞姫、であり殺されてしまうニキヤに聖女のイメージは常につきまとうが、ヴィシニョーワのニキヤは内面の意志の強さ、ソロルを思う意志のつよさ、心を許しあうもの同士のまなざし、など常に伝わってきて、顔の表情ひとつも見逃せない演技も卓越。
踊りのテクニックが非常に高いので、安定感がありながら丁寧にだがテンポよく音楽を取り入れて踊っていく。表現と技術が高いので、マイムやゆっくりとした動きの時はオペラグラスで見入り、広い空間を踊る時はその踊りを堪能するために肉眼で観た。
ニキヤの踊りは、当然、婚姻の儀式のソロは目が離せない。
ガムザッティの踊りがまた素晴らしく、おおいに沸いた会場、から一点ヴィシニョーワが登場すると一気に引き込まれた。
また影の大国ではマラーホフ版は最後に大々的な見せ場がつくられ、コールドバレエではとても早いテンポの曲に切り替わり、それに見とれていると、奥から斜め舞台前方にむかってヴィシニョーワがターンをしながら素晴らしい踊りをみせる。これにはもう2階席からみていたが鳥肌がたつほどのすばらしさ。思わず凄い!と声がでてしまった。

そして先ほどちらりと書いたガムザッティ=ベアトリス・クノップ。
非常に大人っぽい雰囲気で衣装がとて似合うガムザッティの写真を観ていた時から、このガムザッティの踊りが観てみたい。演技は?と楽しみにしていた。
そして昨日は・・・素晴らしい!演技も迫力があり、ニキヤとあらそうシーンは、ヴィシニョーワのニキヤが非常に精神的な強さをみせるので、大迫力でした。マラーホフのカンパニーだからか、構成や演出がドラマチック。ラジャと大僧正がニキヤについて話しているところを物陰から聞いてしまうという二重の舞台構成。そのときの反応。ニキヤのスカーフが天からふわりと落ちてくる演出。

そして婚姻の儀式の間は彼女の踊りを中心にバヤデールならではのバレエの世界を堪能。パ・ドゥ・ドゥではマラーホフともしっかりと踊り、テクニック的にもマラーホフと対等な存在感で圧巻でした。ヴィシニョーワ・マラーホフ・クノップ、バヤデールの中でこれ以外ベストキャストはないのでは?テクニックも演技力も3人のバランスがとてもよく、楽しめるキャスティングです。素晴らしい。
途中、男性二人によるガムザッティのリフトはタイミングの問題で少し上手くいかなかったように見えたほか、影の王国のソリストは少し音楽よりはずれた踊りになっていた点あったが、総じてマラーホフのカンパニーである熱意と若いダンサーの動きは、セットと衣装のすばらしさの引き立てもあって満足できるものであった。2004年秋に始動したばかりのカンパニーで勿論初めて見るダンサーばかり。リングは勿論、バレエを現代性とクラシックの魅力を兼ね備える芸術としてよみがえらせるカンパニーとなってほしい。

ベルリンのラ・バヤデールはぜひDVD作品として記録され、残るべき作品だと思う。